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『イチケイのカラス』を地で行く異色の「リーガルもの」が話題 『逆転裁判官の真意』が示す「ドキュメンタリーの新たな可能性」

(関西テレビ番組特設サイトより)

退官前の1年半で「逆転無罪」を連発した大阪高裁の元裁判官に“弁護士記者”が迫る(関西テレビ番組特設サイトより)

「ドラマでは多い『リーガルもの』だが、特に裁判官をテーマにしたドキュメンタリーは数少ない」と指摘するのは、ジャーナリストで上智大学教授の水島宏明氏。そうしたなか、弁護士資格を持つ記者が手がけた異色の裁判官ドキュメンタリーが昨年11月に放送され、話題となった(現在YouTubeで公開中)。同作の見どころについて、自らもテレビドキュメンタリーを数々手掛けてきた水島氏が解説する。(以下、番組内容に一部触れる箇所があります)

 * * *
 テレビドラマでは弁護士もの、検察官もの、裁判官ものは数多い。最近のドラマには「お仕事ドラマ」と言われるジャンルがあって、医師や看護師、薬剤師が主人公になる「医療もの」と並んで数多い「リーガルもの」もその一つ。年明けにフジテレビでスペシャル版が再放送(関東ローカル)され、劇場版も地上波初放送となった『イチケイのカラス』は主人公が裁判官のドラマだ(連続ドラマは2021年放送)。

 このドラマには、刑事事件の裁判で起訴されたら99%以上が有罪になる日本で30件の無罪判決を出したベテランの裁判官が登場する。小日向文世が演じる駒沢義男だ。主人公の竹野内豊演じる入間みちおは駒沢を師匠と仰いでいる。

「職権を発動します。裁判所主導で改めて捜査を行います。現場検証を行います!」──これが駒沢や入間の決め台詞だ。2人とも徹底した現場主義の裁判官で、疑問があれば裁判官の職権で現場検証を行い、真実は何かに迫ろうとする。

 一方、ドラマとは違って実際のリアルな現場を撮影するのが基本のドキュメンタリーでは「リーガルもの」は数多いとはいえない。「リーガルもの」の一番のクライマックスである法廷が、日本では公判の冒頭しか撮影が許されない場所だからだろう。

 実際、裁判官が主人公になったドキュメンタリーはこれまでごくわずかしかない。カメラが入れる機会がごく限定されて「画にならない」し、黒い法服に象徴される厳粛な「司法の権威をまとっている」こと、裁判官を退職した後も「個々の判断について語ることを控える職業倫理がある」こと、さらに個々の法律の判断そのものがそもそも難解で「映像メディアにはなじみにくい」など、いくつか理由があるだろう。

 そうした中、関西テレビが制作・昨年11月に放送した『ザ・ドキュメント「逆転裁判官の真意」』(YouTubeで全編公開中)は、珍しく裁判官をメインに据えたドキュメンタリーだ。定年で退官する前、「逆転無罪」の判決を連発した裁判官の“真意”について、判決文や関係者の見立てなどから迫っていく──。

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