自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は国会議員3人、3派閥の会計責任者を立件したが、世耕弘成・前自民党参院幹事長ら安倍派幹部の7人や二階俊博・元党幹事長を立件しなかった。
「トカゲの尻尾切り」の終幕だが、地元・和歌山県下で暗闘を繰り広げてきたこの二階氏・世耕氏という2人の大物に焦点を合わせると、「二階氏がさらに攻めに転じる構図が強まった」との見方が浮上している。どういうことなのか。
政治資金収支報告書への3500万円の不記載の容疑で二階事務所で略式起訴されたのは、永田町で二階氏の“かばん持ち”として随行してきた私設秘書の梅澤修一被告だ。
地元の和歌山県御坊市で「40年間、二階さんを見てきた」と語る共産党の元県議、楠本文郎氏はこういう。
「二階さんは過去に何度も『政治とカネ』の問題が出ましたが、そのたびにすんでのところで危機をくぐり抜けてきた。百戦錬磨で、本人の責任が問われないよう、万全の備えをしてきたはずです」
実際、立件された二階派の会計責任者と二階氏との間で共謀は認められなかった。和歌山の地元の二階ウォッチャーたちの間でもこの点は折り込み済みだったとはいえ、立件前日の1月18日木曜日、彼らの間で静かな衝撃が走っていたようだ。そのことを、たまたま県内で取材をしていた筆者は感じ取った。
立件される秘書は誰だ
きっかけは「二階氏秘書も立件へ」と報じた1月18日の朝日新聞の報道。実際に略式起訴されることになる梅澤氏とは違う、“別の人物”がターゲットではないかとの見方が瞬間的に浮上していたからだ。自民党関係者が解説する。
「二階氏の議員関係団体は、総務省に届け出がある〈新政経研究会〉と県庁に届け出がある〈自由民主党和歌山県第3選挙区支部〉の2つ。後者の自民党支部の会計責任者は後援者である地元企業の社長ですが、前者のほうの会計責任者は二階氏の長男・俊樹さんなのです」