紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』がスタート。吉高由里子演じるまひろ(後の紫式部)と柄本佑演じる藤原道長が今後どう絆を深め、そして『源氏物語』がどう紡がれていくのか、期待が高まっている。そこで、その『源氏物語』の魅力について深掘りする。【前後編の前編】
紫式部が平安時代中期に書いた『源氏物語』。主人公・光源氏と数々の女性たちとの恋愛模様や宮中のきらびやかな世界が描かれた、全54帖から成る日本最古の長編小説だ。
小説家で恋愛エッセイも得意とする島村洋子さんは、『まるわかり! これからはじめる源氏物語』(双葉社)で、全54帖を“超訳”し、光源氏の栄華と衰退、そして子供たちの世代へ──物語全体の流れを総覧した。
「『源氏物語』は現代における週刊誌のような、リアルタイムのスキャンダルを載せた世俗的な読み物だったと思いますし、そう考えれば、肩をこらずに読めるのではないでしょうか」(島村さん・以下同)
今回久しぶりに『源氏物語』を手に取った島村さんは、感じ方や見えるものの変化に気づいたという。
「若いときは、色男がいろんな女を手玉にとってひどい話だと思っていたけど、光源氏はかかわった女性全員にお金をあげて自分のところに住まわせている。老人ホームに入るお金を貯める必要もない。それぞれの長所を見て、面倒をみているところに甲斐性を感じるようになりました。
人生ずっとよいことがあるわけでもなく、どんなに出世しても、いつかその立場を追われる。光源氏はいろんな人を愛しましたが、いちばん愛した人を失ってから、その存在の大きさに気づいたりもします。そんな人生の真実、悲哀も感じられ、『源氏物語』は中高年以上にこそオススメの物語だと思いました」
いま読んでもリアリティーがある
学生時代から大学教員を経て現在までの約40年間、『源氏物語』に魅了され続けてきたと話すのは小説家の奥山景布子さん。『フェミニスト紫式部の生活と意見〜現代用語で読み解く「源氏物語」〜』(集英社)などの著書がある奥山さんは、その魅力をこう語る。
「最大の魅力は、現代のテレビドラマにも通じる、細やかな心理描写です。恋愛小説として、いま私たちが読んでもリアリティーがあるんですよ」
奥山さんがまず挙げたのが、朧月夜という女性と朱雀帝のシーンだ。朧月夜は朱雀帝のお妃になるはずが、帝の弟である光源氏と関係を持ってしまう。朱雀帝はそれでも朧月夜をそばに置くが、彼女は光源氏との関係を続けていた。