西武からFA移籍したソフトバンク・山川穂高(32)の人的補償が、和田毅(42)と報じられた後に一転、甲斐野央(27)に決まったことで球界を騒がせた。野球ファンの注目は、ソフトバンクが功労者の和田をプロテクトしなかったのかという点に集まったが、一方で西武の視点から見れば「結果オーライの補強だった」との声も聞こえてくる。
昨季、松井稼頭央監督(48)を迎えた西武は、65勝77敗1分の勝率.458でシーズン5位の成績に終わった。山川の欠場も大きかったが、西武の元コーチの1人は「リリーフ陣の層の薄さが目立った」と振り返る。
「どういう経緯で和田と報じられたのが甲斐野になったのかわからないが、甲斐野が最初からプロテクト枠から外れていたとしたら、今の西武なら和田よりも甲斐野を獲りにいったと思う。というのも、今のストッパー・増田達至(35)に少し陰りが出ていますし、元リリーフの平良海馬(24)も昨年から先発に転向し、今年も先発に回ります。そうなれば当然、後ろが足りない。そこで160キロ右腕の甲斐野は抑えにふさわしいわけです。
もちろん和田も魅力的ですが、戦力ということでは甲斐野が上。ソフトバンクは年齢的に指名されないだろうとタカを括ったんじゃないか。まぁ、大人の事情で甲斐野に変わったとすれば、西武としてはよかったんじゃないですか」
西武にはこのオフ、6年ぶりに捕手・炭谷銀仁朗(36)が復帰したが、その炭谷が2018年オフにFA宣言した際、人的補償で巨人から内海哲也(41)を指名・獲得した前例もあった。和田にも同様の“指導者含み”の貢献を期待したとの見方もある。パ・リーグ球団の元編成担当者はこんな言い方をする。
「球団の考え方次第ですが、巨人のように豊富な戦力があれば、あえてプロテクト枠を外すことで、旬を過ぎたベテランを放出するという側面もありますからね。一軍枠が31人、ベンチ入り選手が26人に対してプロテクト枠の28人は少なすぎるので、どうしても主力選手や若手の有望選手をプロテクトしなければならない。炭谷の人的補償で西武に移籍した内海もそうですし、広島から丸佳浩(34)を獲得した際に長野久義(39)、DeNAから門倉健(50)を獲得した際は工藤公康(60)もスンナリと移籍しています」
球界の人事には様々な思惑が絡むわけだ。