多くの著名な音楽関係者が亡くなった2023年。訃報が届くたびに、自らの人生を振り返ったという人も少なくないだろう。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子は、八代亜紀さんの訃報をきっかけに、“余命”について考えたという。オバ記者が綴る。
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もしかして私はものすごく大きな思い違いをしていたんじゃないか? 最近、そんなことばかり思っている。それは平均寿命と自分の残り時間のこと。
厚労省が昨年発表した日本人の平均寿命は、女性は87.09才で男性は81.05才。ちょっとだけ前年を下回ったとはいえ平均寿命は確実に延びていて、「人生100年時代」はもう目の前。てことは、66才の私はあと30年はいける、と何の疑問もなく思っていたんだよね。
そりゃあ、一昨年の秋に「卵巣がんの疑い」で大手術をしたときはカウントダウンの音を聞いた気がしたのよ。でも手術の結果、がんでないことがわかるとまたまたいつものケセラセラ。
それが、「あれ?」と思ったのは、昨年秋の谷村新司さんの死よ。74才だったそうだけど、高校生のとき、布団の中にトランジスタラジオを持ちこんで深夜放送を聴いていた私にとっては永遠のお兄さんよ。ほかにも昨年は音楽関係者の訃報が相次いだ。坂本龍一さん(享年71)、もんたよしのりさん(享年72)。
さらに今年になって八代亜紀さん(享年73)が鬼籍に入ってたって聞いたときは一瞬、何が起きたかわからなかったもんね。そういえば昨年のNHK紅白歌合戦で名前が出なかったなとか、最後に出場したのっていつだっけ?とか……混乱した頭でニュースをググると、しばらく前から膠原病を患っていたそう。
実は私、八代亜紀さんとはちょっとしたご縁があったんだよね。
話は43年前にさかのぼる。当時、某テレビ局の外郭団体の職員と知り合いで、その彼がテレビ局がらみのイベントの仕事をしていたんだわ(ちなみに、その彼と後に結婚して離婚した)。で、彼の先輩が子供向けの人形劇の巡回イベントを企画していたんだけど、どうしたことか巡り巡って私に「脚本、頼めない?」って、いま思えば乱暴な話よ。私は週刊誌のライターになり立てで脚本なんか書いたことがない、と一旦は断ったはずなのに、台本をドンと持って来られて、「だいたいこんな感じで書いて」って。
根がいい加減なせいか、見よう見まね。どうにか仕上げたけれど、その台本で人形劇一座が地方のデパートを回り始めたと聞いても、私は聞こえないふり。おっかなくて見られたものじゃないわよ。だけど、そういうときに限って話がでかくなるんだね。地方回りをしていた一座が、好評につき東京のホテルで凱旋帰京公演をすることになったと聞いたときは耳をふさいだっけ。イベント会場に行くには行ったものの、やっぱりおっかなくて、私は見ていない。
私がそのイベントで見たのは、八代亜紀さんが輝くばかりの笑顔で歌う『雨の慕情』と、私の太ももと同じくらいのウエスト。それを私は最前列で見上げていたっけ。そのときのことを「昨日のことのよう」とは言わない。でも実感としては「数年前のことのよう」なんだよね。