今冬クールの連続ドラマがスタートする中、ファンタジー作品が目立っている。とりわけ、フジテレビとTBSの恋愛ドラマの看板枠で、いずれも“心”をモチーフにした作品が放送されていることが注目を集めている。なぜ今、“心”なのか? その狙いについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今冬ドラマ最大の傾向は、ファンタジー要素を採り入れた作品が6つも放送されていること。なかでも比較されることで注目度を上げているのが、主人公が愛する人を救うために“心”を差し出す『君が心をくれたから』(フジテレビ系、月曜21時)と、“心”の声が聞こえる主人公があきらめていた恋をする『Eye Love You』(TBS系、火曜22時)です。
ともに“心”をモチーフにしたファンタジー・ラブストーリーである上に、前者が永野芽郁さん(24歳)、後者が二階堂ふみさん(29歳)という20代の主演女優であること。それぞれ“フジの月9”と“TBSの火曜ドラマ”という恋愛ドラマの看板枠であることという共通点もあり、ネット上では何かと比較される機会が増えています。
なぜ“心”をモチーフにした作品がかぶり、それぞれどんな勝算があるのか。さらに、もう1つ両作と比較されている意外な今冬のドラマについても掘り下げていきます。
「切なさと重さ」「明るさと軽さ」で勝負
両作の共通点は前述したように、「20代主演女優のファンタジー・ラブストーリーであり、恋愛ドラマの看板枠で放送されていること」に加えて、「制作サイドがピュアな恋心を描こうとしている」こと。
『君が心をくれたから』は、高校時代に惹かれ合った逢原雨(永野芽郁)と朝野太陽(山田裕貴)が8年の年月を経ても一途な想いを貫こうとする様子が描かれています。一方の『Eye Love You』の第1話では、チョコレートショップの社長・本宮侑里(二階堂ふみ)に韓国人留学生のユン・テオ(チェ・ジンヒョプ)が「会えてうれしい」「僕のことは好きですか?」とストレートに好意をぶつけていくというストーリーが描かれました。
ただ、両作の世界観はまさに真逆。『君が心をくれたから』は、太陽の命を救うために雨が“心”を差し出し、五感が1つずつ失われていく……という切なく悲しい物語。「想いは通じ合い、距離は近づいているのに、恋人としてできることが減っていく」という展開は、どこか重さを感じさせるところもあります。
一方、『Eye Love You』は、「明るくストレートに恋を描きながら、なかなか距離が縮まらず、もどかしさを感じさせる」という王道のラブコメ。第1話から不意に抱き合うシーンが2回あるなどの胸キュン要素や、料理とチョコレート、ラッコのイラストやグッズなどの癒しも含め、随所に軽さを感じさせます。
『君が心をくれたから』の切なさと重さ、『Eye Love You』の明るさと軽さこそがピュアな恋心を描く上で視聴者を引きつけたいポイントであり、それぞれの勝算なのでしょう。
「よくある設定」ではない“心”
では、なぜ“心”をモチーフにした作品がかぶったのか。
近年、休日明けの月曜・火曜に放送される連ドラは、「考えすぎず気軽に見たい」「シリアスなムードや深く考えなければいけない物語は避けたい」などの視聴者傾向があると言われています。
その視聴者傾向に合うのが、非現実的な設定を生かしたファンタジー作。実際、『君が心をくれたから』は「心を差し出す」という重い設定でも「架空の話」と割り切りやすく、『Eye Love You』は「心の声が聞こえる」ことをシンプルに恋や笑いにつなげています。
両作とも原作のないオリジナルですが、ファンタジー作を手がける際にポイントとなるのは、“よくある設定”にしないこと。入れ替わり、幽霊、タイムリープなどの昭和時代から繰り返し使われ続けてきた設定は飽きられている感もあります。