中国の国家警察機関である中国公安省は、「2024年はインターネットを中心した偽情報を摘発する特別行動実施の1年とする」と発表した。このところ、中国最高指導部や社会問題に関する偽情報がネット上で氾濫しているためだ。
公安省は「取り締まりは今年1年間、中国全土のすべてのメディアを対象に行われ、全国に公安要員を派遣する」などと異例の対応をとることを明らかにしている。中国共産党で情報、治安、司法、公安などの部門を主管する中央政法委員会の機関紙「法制日報」が報じた。
昨年12月、甘粛省でマグニチュード6.2の地震が発生した際、ネット上では「政府の救援活動が遅れて、1000人以上が死亡した」などとの情報が飛び交った。実際の死者数は約150人だったが、この偽情報を信じた人々が「中国政府の怠慢だ」などと批判するコメントをネットにあげるなど、政府に対する誹謗中傷が大きな混乱を招いた。
公安省はこのような偽情報を流した上海市在住の男性を始め、偽情報を拡散した人々を逮捕した。
また、昨年10月、李克強前首相が上海滞在中に病死したニュースが発表されると、海外から、「李総理は殺害された」などとの情報が拡散。公安当局は海外在住の民主化活動家ら「不満分子」による犯行と断定し、ICPO(国際刑事警察機構)などを通じて、偽情報を流した海外組織の摘発を進めているという。
さらに、経済分野でも、このところ大手不動産業、恒大集団の経営不振が大きな問題になるなか、同社の倒産情報が流れたことがあった。恒大集団の株式は昨年8月、約1年半ぶりに香港株式市場で取引が再開されたが、北京のネットユーザーが「倒産間際」などとの偽情報を流したことで、一時、株式市場が混乱した事件も起こっており、公安省では経済に関するデマ情報取り締まりにも力を入れる方針だ。
このほか、少数民族に関する偽情報もここ数年多くなっている。チベット族の著名な女性インフルエンサーが「チベット族の小中学生は宗教儀式に出ることを禁止されている」との情報を流したとの容疑で警察に逮捕されており、中国当局はチベット族を中心とする少数民族問題にも敏感になっている。