「誰か特大の目覚まし時計でも買ってあげて!」──巨人の阿部慎之助・監督(44)にそう言わしめたのは、初のレギュラー定着に意気込む秋広優人(21)である。2月1日からの春季キャンプには1軍帯同が決まったものの、昨年11月のNPBアワードなど、オフ期間に二度の“遅刻”をしていたことが発覚し、阿部監督は「3軍にしようかと思った」「人としての成長を監視しときます」と言い放った。巨人の元コーチが語る。
「これはマズいですねぇ。紳士球団の巨人は、集合時間の30分前には集まる“ジャイアンツタイム”が慣例となっている。秋広のような若手は30分前にスタンバイし、監督やコーチも10分前には集まるのが普通ですよ」
高卒3年目の昨季は自身最多の121試合に出場したが、打率.273、10本塁打、41打点と確固たるレギュラーには至らず。さらに今季は、メジャー通算178本塁打の大物新外国人、ルーグネッド・オドーア(29)が加入するため、秋広のレギュラーも当確ではないとみられている。巨人番記者は以下のように語る。
「オドーアは一塁、二塁、三塁も守れるという触れ込みですが、一塁は岡本和真(27)、三塁は坂本勇人(35)と固まっており、二塁も吉川尚輝(28)が有力なので、基本的にはライトで起用されそうです。
オドーアの加入で残る外野2枠が大変なことになっている。阿部監督は秋広にはレフトを守らせるつもりだが、センターからコンバートの丸佳浩(34)や梶谷隆幸(35)との競争になる。センターはさらに熾烈で、2022年ドラ1の浅野翔吾(19)やドラ2の萩尾匡也(23)、そして昨年のドラ3・佐々木俊輔(24)に、楽天から現役ドラフトで加入して2年目のオコエ瑠偉(26)らが争うことになる」
今季の秋広は自身初の開幕スタメンに向け、オフに中日に移籍した中田翔(34)と大分で合同練習を敢行。2人とも頭を坊主に刈り上げ、決意を見せていた。さらに秋広は1日10合の白米を食べる“食トレ”で、現在100kgある体重を110kgまで増量してパワーアップした。そうしたなかで飛び出したのが“遅刻報道”で、キャンプには目覚まし時計を3つ持参するという。
前出の番記者は「阿部監督は早朝ランニングを日課にし、早起きはお手のもの。現役時代から遅刻と無縁の人だったので、秋広の“遅刻癖”がマイナス評価にならなければよいのですが……」と続ける。その懸念は現実のものとなってしまうのか──。スポーツ紙デスクはこんな見方をする。
「阿部監督には、遅刻の常習犯として知られた松井秀喜さん(49)を念頭に、メディアを通して秋広の“大物ぶり”をアピールする意図もあるのではないか。松井さんはプロ3年目、1995年のオールスターで飛行機に乗り遅れ、試合前の練習に間に合わなかったが、それでも試合でMVPをとる活躍を見せた。
もっと言えば、王貞治さん(83)もよく寝坊したそうで、入団3年目のベロビーチキャンプで飛行機の時間に寝坊して長嶋茂雄(87)さんに起こされたとか、広島遠征の夜行列車で寝過ごしそうになったのを長嶋さんに助けられたといったエピソードが伝説になっている。豪快なエピソードは、いわば大物の証です。阿部監督の叱咤激励は、松井さんと同じ背番号『55』を背負う秋広への期待の裏返しだと思いますね」
新監督流の“愛のムチ”なのか。秋広は姿勢と結果で示すしかない。
※週刊ポスト2024年2月9・16日号