この冬は寒暖差が大きく、体調を崩しやすい。休日は静養もかねてゆっくりと家で読書を楽しんでみてはいかがだろう。そこで、おすすめの新刊を紹介する。
『変な家2 〜11の間取り図〜』/雨穴/飛鳥新社/1650円
生意気ですが、シリーズものになっただけあって、前作よりキリッと締まる。家にまつわる不思議を、今も喉に刺さった小骨のように取れない思い出としてフリーライターの「筆者」に語る男女。行き先のない廊下、水車小屋の秘密、屋内でつながった父との糸電話、ある宗教施設。各話の小骨が数珠つなぎになって大きな図柄になるのが今回の読みどころ。設計士の栗原も健在だ。
『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ行」が苦手な君に』/大平一枝/ポプラ社/1980円
吃音の方々が接客する略称「注カフェ」。当事者の奥村安莉沙さんが立ち上げ、全国で開催されて話題だ。吃音の愉快な友人がいたので、恥ずかしながら吃音にこんなお困り事があったなんて想像もしていなかった。学校でのイジメ、自己紹介タイムの悪夢や就活の困難。プロジェクトに参加した若者達の声に耳を傾けた同行エッセイ。自信を付け未来に向かう若者達の姿が印象的だ。
『ナイン・ストーリーズ』/J.D.サリンジャー著/柴田元幸訳/河出文庫/891円
野崎孝訳で読んだのは大昔。この柴田元幸訳で読み、ほとんど憶えていないことに愕然とする。途中で謎めいたサリンジャーの人生に興味が移ってしまったせいかも。「バナナフィッシュ日和」はサリンジャーが各作品に散らせていたグラース家サーガ(長編)の一編。無垢な少女と海辺で遊んだ後に訪れる衝撃的な結末に息を呑む。「エスキモーとの戦争前夜」や「笑い男」も好き。
『超短編! 大どんでん返し Special』/小学館文庫編集部/660円
目次に錚錚たる作家がズラリ。どれから読もうと指が迷い箸に。先頃直木賞を受賞した万城目学の「おとうちゃん」は急逝した夫の不在を嘆き悲しみ続けた母に、理系兄弟が亡父のロボットを贈るというもの。さて母のしぶとい呪文とは。注目の若手・蝉谷めぐ実の“奇妙な味”、着地が決まる横関大の「オンライン家族飲み会」、黒い古畑任三郎を書く乗代雄介。楽しいですよ〜。
文/温水ゆかり
※女性セブン2024年2月15日号