ライフ

【新刊】前作よりキリッと締まる不思議な話、各話の小骨が数珠つなぎになって大きな図柄になる『変な家2』など4冊

映画『変な家』もこの3月公開に。じわじわ迫る不気味さを楽しんで

映画『変な家』もこの3月公開に。じわじわ迫る不気味さを楽しんで

 この冬は寒暖差が大きく、体調を崩しやすい。休日は静養もかねてゆっくりと家で読書を楽しんでみてはいかがだろう。そこで、おすすめの新刊を紹介する。

『変な家2 〜11の間取り図〜』/雨穴/飛鳥新社/1650円
 生意気ですが、シリーズものになっただけあって、前作よりキリッと締まる。家にまつわる不思議を、今も喉に刺さった小骨のように取れない思い出としてフリーライターの「筆者」に語る男女。行き先のない廊下、水車小屋の秘密、屋内でつながった父との糸電話、ある宗教施設。各話の小骨が数珠つなぎになって大きな図柄になるのが今回の読みどころ。設計士の栗原も健在だ。

接客業をしてみたいけれど……。吃音者の夢を叶える意義あるプロジェクト

接客業をしてみたいけれど……。吃音者の夢を叶える意義あるプロジェクト

『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ行」が苦手な君に』/大平一枝/ポプラ社/1980円
 吃音の方々が接客する略称「注カフェ」。当事者の奥村安莉沙さんが立ち上げ、全国で開催されて話題だ。吃音の愉快な友人がいたので、恥ずかしながら吃音にこんなお困り事があったなんて想像もしていなかった。学校でのイジメ、自己紹介タイムの悪夢や就活の困難。プロジェクトに参加した若者達の声に耳を傾けた同行エッセイ。自信を付け未来に向かう若者達の姿が印象的だ。

現代の古典『ライ麦畑でつかまえて』とほぼ同時期に書かれた完成度高い短編集

現代の古典『ライ麦畑でつかまえて』とほぼ同時期に書かれた完成度高い短編集

『ナイン・ストーリーズ』/J.D.サリンジャー著/柴田元幸訳/河出文庫/891円
 野崎孝訳で読んだのは大昔。この柴田元幸訳で読み、ほとんど憶えていないことに愕然とする。途中で謎めいたサリンジャーの人生に興味が移ってしまったせいかも。「バナナフィッシュ日和」はサリンジャーが各作品に散らせていたグラース家サーガ(長編)の一編。無垢な少女と海辺で遊んだ後に訪れる衝撃的な結末に息を呑む。「エスキモーとの戦争前夜」や「笑い男」も好き。

時代小説から探偵ものの換骨奪胎、SFなど、奇想のお楽しみボックス

時代小説から探偵ものの換骨奪胎、SFなど、奇想のお楽しみボックス

『超短編! 大どんでん返し Special』/小学館文庫編集部/660円
 目次に錚錚たる作家がズラリ。どれから読もうと指が迷い箸に。先頃直木賞を受賞した万城目学の「おとうちゃん」は急逝した夫の不在を嘆き悲しみ続けた母に、理系兄弟が亡父のロボットを贈るというもの。さて母のしぶとい呪文とは。注目の若手・蝉谷めぐ実の“奇妙な味”、着地が決まる横関大の「オンライン家族飲み会」、黒い古畑任三郎を書く乗代雄介。楽しいですよ〜。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年2月15日号

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン