かつて冬季の連続ドラマには、刑事モノが多かった。しかし今季は医療×刑事ドラマの『院内警察』(フジテレビ系)のみで“0.5作”という状況だ。なぜ「冬の刑事ドラマ」は減ってしまったのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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2月に入って冬ドラマが序盤から中盤に差し掛かる中、ふと気づかされたのが、この時期の定番だった刑事ドラマの少なさ。下記に、民放ゴールデン・プライム帯で放送されている今冬の新作ドラマを挙げていきましょう。
月曜―『君が心をくれたから』(フジテレビ系、21時)、『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系、22時)
火曜―『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系、21時)、『Eye Love You』(TBS系、22時)
水曜―『となりのナースエイド』(日本テレビ系、22時)、『婚活1000本ノック』(フジテレビ系、22時)
木曜―『グレイトギフト』(テレビ朝日系、21時)、『大奥』(フジテレビ系、22時)
金曜―『ジャンヌの裁き』(テレビ東京系、20時)、『院内警察』(フジテレビ系、21時)、『不適切にもほどがある!』(TBS系、22時)
土曜―『新空港占拠』(日本テレビ系、22時)
日曜―『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系、21時)、『アイのない恋人たち』(ABC・テレビ朝日系、22時)、『厨房のありす』(日本テレビ系、22時30分)
毎年2クール連続放送され、現在22シリーズ目の『相棒』(テレビ朝日系、水曜21時)は別格として、刑事ドラマの新作は医療×刑事ドラマの『院内警察』のみ。15作中“0.5作”に留まっています。
では過去の冬ドラマではどれくらい刑事ドラマが放送されていたのでしょうか(刑事事件を解決する物語)。
昨年の冬ドラマでは、『警視庁アウトサイダー』(テレビ朝日系)、『今野敏サスペンス 機捜235』の13作中2作。2022年の冬ドラマでは、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)、『駐在刑事』(テレビ東京系)、『DCU~手錠を持ったダイバー~』(TBS系)の11作中3作。
2021年の冬ドラマでは、『監察医 朝顔』(フジテレビ系、医療×刑事0.5作)、『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)、『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系、学園×刑事0.5作)、『警視庁強行犯係 樋口顕』(テレビ東京系)、『レッドアイズ 監視捜査班』(日本テレビ系)の12作中4作。
ちなみに5年前の2020年は、『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)、『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)、『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』(テレビ東京系)、『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)の13作中4作。
10年前の2014年は、『隠蔽捜査』(TBS系)、『福家警部補の挨拶』(カンテレ・フジテレビ系)、『緊急取調室』(テレビ朝日系)、『戦力外捜査官』(日本テレビ系)、『S -最後の警官-』(TBS系)の14作中5作。
やはりジワジワと減って今年の“0.5作”に至った様子がうかがえます。なぜ冬の刑事ドラマはこのように減っているのでしょうか。
テレビ朝日にも脱・刑事ドラマの動き
そもそも刑事ドラマが冬の定番だった理由は、「寒さから在宅率が上がり、家でゆっくりテレビを見る時期だから」「事件解決に向けた謎解きを楽しむ視聴者が多いから」「日没の早さや人気(ひとけ)の少なさなどから事件の描写がハマりやすいから」などと言われています。
その傾向はおおむね変わっていない一方で、明らかに変化が見えるのは作り手たちの意識。近年は各局のプロデューサーから、「家でゆっくりテレビを見てもらうチャンスがあるのなら、見ごたえのある別のジャンルでもいいのではないか」「むしろ2010年代に量産されて飽きられた感のある刑事ドラマより別ジャンルのほうがいいのではないか」という意識が感じられます。
その意識をさらに加速させたのが2020年春の視聴率調査リニューアル。全国規模で年代別の個人視聴率などが計測されるようになり、民放各局はスポンサー受けのいいコア層(主に13~49歳)に向けたドラマを手がけるようになりました。