アスリート・コンサルタントの鴻江寿治氏は、毎年キャンプイン前の1月に、トップアスリートが集う合宿を主宰している。野球に限らず、ソフトボール、ゴルフ、陸上競技などのトップ選手がこぞって参加する背景には、鴻江氏が独自に導き出した「体の動かし方の極意」の効果にあった。合宿の模様をリポートする。
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肌寒い福岡県久留米市内で、鴻江氏が運営する「鴻江スポーツアカデミー」主催の合宿が1月15~19日にかけて行われた。まずはプロ野球の野手組と、女子ソフトボールチームの選手たちが参加。途中からプロ野球の投手組も合流し、2003年の開始以降、参加者は最大規模だった。
参加したのは、昨秋開催された「アジアプロ野球チャンピオンシップ」の日本代表に選出された今井達也投手(25才)や隅田知一郎投手(24才、ともに埼玉西武ライオンズ)をはじめ、安田尚憲選手(24才)や種市篤暉投手(25才、千葉ロッテマリーンズ)、木澤尚文(25才、東京ヤクルトスワローズ)ら球界のホープばかり。また、ソフトボールの上野由岐子(41才、ビックカメラ高崎)、プロゴルファーの天本ハルカ選手(25才)らの姿もあった。
合宿の目玉は、毎日行う「茶畑ランニング」だ。約1kmのゆるい下り坂をトップスピードで駆け降りる。体力自慢のアスリートですら苦悶の表情を浮かべるほどだ。鴻江氏がその狙いを明かす。
「下り坂では、自然と自分の限界以上のスピードが出ます。眠っている筋肉の可動域が拡大し、ポテンシャルを呼び覚ますことができるのです。可動域が広がれば、体のバランスも鍛えられる。個々で取り組まずにみんなで一斉に行うのは、誰かについて行こうとすることでトレーニング強度を上げてくれると同時に、苦しさを乗り越えられる効果があると思っています」
球場での練習に移ると、ピッチャーマウンド周辺にカメラ数台と大型モニターが設置され、「もっと腕を振らんと!」「左目で投げる!」などと鴻江氏の檄が飛ぶ中、選手は余念なくフォームチェックに努めていた。
かつては、千賀滉大投手(31才、ニューヨーク・メッツ)や菅野智之投手(34才、読売ジャイアンツ)らもこの合宿でレベルアップしし、球界を代表する選手へと登りつめていった。それが、アスリートの“虎の穴”と呼ばれる由縁だ。前出の上野投手が語る。
「毎年、シーズンはどういうフォームで、どんなイメージで戦っていくのか。鴻江先生との会話を通して、自分のフォームを確認していく作業を繰り返します。私にとって、この合宿が“”1年の始まり“とも言えるものです」