放送のたびに大きな反響を呼ぶ宮藤官九郎脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系、毎週金曜夜10時)。1986年(昭和)と2024年(令和)の日本を行き来しながら、それぞれの時代の“当たり前”を面白おかしく対比することで、視聴者に様々な感情を呼び起こしているようだ。そうしたなか、テレビ局出身のジャーナリストで上智大学教授の水島宏明氏は、テレビ局の「働き方改革」がテーマだった第2話放送を受け、「テレビの劣化」を意識させられたという。水島氏が解説する。(以下、番組内容に一部触れる箇所があります)
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TBS『不適切にもほどがある!』は痛快なドラマだ。「これって自分が感じていたことでは?」──そのように思わず溜飲が下がった人も少なくないだろう。世の中は令和──。昭和の頃に比べて何事も便利になり、個人の権利もかなり認められるようになって社会は前進している……はずなのに、どこか閉塞感が漂って景気が悪いままの“令和”の日本に対する痛烈な時代批判が満載なのだ。
ドラマは阿部サダヲが演じる“昭和の体育会系パワハラ&エロ親父”の小川市郎が令和の2024年にタイムスリップして、1986年の視点から見た違和感を率直に表明する。「おかしくないか!?」と異議を唱えていく物語だ。
第2話(2月2日放送)はテレビの現場の“矛盾”を突きつける回だったように思う。簡単にあらすじを振り返ってみよう。
テレビ局でバラエティ番組のアシスタント・プロデューサーを務める犬島渚(仲里依紗)は、長男を出産して産休明けで職場復帰する。折しもテレビ局は「働き方改革」を推進し、仕事は「一人で抱えこまない」がキャッチフレーズ。「シフト勤務」を推奨中だ。上司から新人社員に仕事の引き継ぎをするよう指示され、息子を預ける局内の託児室と職場を1日5往復して業務を説明する渚。だが新人は2本収録の1本目が終わると「シフト勤務なのでここまで」と帰ってしまう。2人目の新人が交替で来るものの、やはりシフトを理由に番組終了後、片付けもせずに帰っていく。
渚の夫の谷口(柿澤勇人)はテレビ局のニューヨーク特派員だったが、現在はフリーとして配信チャンネル『正論』で発信する“正論オトコ”だ。「ゴミの分別」「男性の育児参加」「働き方改革」など正論を吐く。谷口も上司も「一人で抱え込まないで……」と渚をいたわる。しかし、ワンオペ育児と仕事をこなす渚には人に教える手間暇も惜しく、「一人で抱え込んだほうがマシ」と猛反発。現実の制作現場でも、確かに「働き方改革」の推進でかえって仕事が増える構図がある。