マレーシアのクアラルンプール国際空港から台湾の桃園国際空港経由で中国・北京に向かうマレーシア航空機に搭乗していた中国籍市民3人が1月30日、桃園空港でトランジットの際、空港係員に「台湾に亡命したい」と求めたが、台湾当局は拒否し、出発地のマレーシアに送り返していたことが明らかになった。
今回の3人への対応は台湾総統選直後ということもあり、台湾当局が中国とのトラブルを起こしたくないとの思惑が働いたとみられる。台湾各紙が報じた。
台湾亡命を申し出たのは夫婦と息子の3人で、旅客機が桃園空港に到着すると、すぐ空港事務所で「われわれは中国政府から迫害を受けている。台湾に亡命したい」と申し出た。
空港職員はすぐに出入国管理官に連絡。管理官は3人と面談し事情を聞いた後、携帯電話やパスポートなどを押収し、空港内の一室に隔離したという。
その後、管理官は台湾で中国問題を担当する機関である大陸委員会と連絡したところ、3人から事前に「亡命したい」との連絡を受けていないことや、合法的な台湾での滞在ビザなどももっていないことから、航空機の出発地であるクアラルンプールに送り返すことを決めた。
大陸委側は「こうした場合の対応は、世界のすべての国の空港で同じであり、合法的な入国許可がなければ、各国はこれらの乗客を入国させない。これは国際的な慣行だ」としている。
しかし昨年9月に中国人の民主化指導者である陳思明氏が桃園空港にトランジットのため到着した際、空港係員に「第三国への亡命」を求めたケースでは、大陸委は陳氏を空港で2週間滞在させ、カナダへの政治亡命の手続きをとっており、今回の対応とは明らかに違っている。この違いについて、大陸委は「彼は政治的な迫害を受けており、すでに中国大陸を離れることを表明していた」と説明している。
今回の場合、独立志向の強い民主進歩党の頼清徳氏が台湾総統選で勝利した直後のタイミングということも影響した可能性が高い。3人の亡命を受け入れれば、中国政府からの激しい反発が予想され、中台関係が一層悪化することは必至であり、中国とのトラブル回避で、中国に送り返すとの選択肢を選んだといえそうだ。