モネを筆頭に、フランスから世界へと広がった印象派。その歴史を、アメリカ・ウスター美術館の所蔵を中心に約70点に及ぶ作品でたどる展覧会が開催。実はアート初心者というオフィシャルサポーターの鈴鹿央士が、誰でも気楽に楽しめる見どころをレクチャーしてくれました!
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ウスター美術館はアメリカ・ボストン近郊にある地域密着型の美術館で、誰もがフラッと立ち寄れる場所になっているそうなんです。この展覧会でもその気軽な雰囲気が引き継がれていて、“敷居の低さ”がポイント! 「モネの『睡蓮』が来ているなら見てみよう!」くらいの気楽な感じで見に来ていただければと思います。
展覧会って集中して見るから神経を使って疲れるかなって思っていたんですけど、実際に見て回ったら絵からパワーや元気をもらえて、晴れやかな気分になったので疲労感はなかったですね。印象派の絵は風景や人などすごく生活に根付いた作品が多いし、光の入り方などの瞬間の切り取り方や、風や木々の揺れといった印象派ならではの表現がすごくきれいなところも見どころです。
今回、音声ガイドのスペシャルトラックにも挑戦しています。見ているかたに寄り添って、いっしょに展示を巡っているような感覚で楽しめるように、ぼくも肩の力を抜いて収録しました。
日本では西洋の絵画=印象派というイメージがあります。特にモネ、ルノワール、セザンヌは学校の授業で習ったりして、みなさんの中でも名前になじみがあるはず。まずは“有名どころ”の作品から見るのも、いい経験になると思います。
●クロード・モネ『睡蓮』1908年
「水面に映る景色の美しさや作品の爽やかさを感じて、多くの人が魅了される理由がわかった気がします。モネの『睡蓮』を世界の美術館で初めて購入したのが、ウスター美術館。今回、画商と当時の館長とのやり取りの手紙も展示されているので、その歴史に触れるのも楽しいと思います」(鈴鹿・以下同)
●ピエール=オーギュスト・ルノワール『闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール』1917年
「最初は風景画にばかり目がいっていたんですけど、人物画もすごくよくて! その人の持つ雰囲気やオーラを描いている感じがして、印象派の人物画の面白さを新たに発見しました」
●ポール・セザンヌ『オーヴェールの曲がり道 』1873年頃
「印象派の作品は色味が繊細。資料写真で見てもすごいなと思っていたんですけど、実際に見ると色彩や絵の具の質感が違います」
フランスから世界へ 注目作家ベスト3
「パリで生まれた印象派が、世界中にどう広がっていったのか。アメリカに伝わってどのように色づいていったのかを一堂に見ることができます」
●チャイルド・ハッサム『花摘み、フランス式庭園にて』1888年
「実際に見ると木漏れ日の明暗がきれい! 個人的には奥のベンチに座っているおじいさんが好きなんですけど、そんな細部までよく見えるように描かれています。
●ポール・シニャック『ゴルフ・ジュアン』1896年
「これまで新印象派の作品は見る機会がなかったけど、すごくよかった! その中でもこの作品が好きです。ぼくはドット絵と呼んでいるけど(笑い)、正しくは“点描画”という手法が使われていて、実際に見ると質感が全然違います」
●黒田清輝『落葉』 1891年
「日本に印象派を伝える大きな役割を果たした画家。フランスの風景が描かれているのですが、日本の風景かなと思ったくらい懐かしさを感じました」