「いまはもっと仕事がしたい」「子供のことは仕事が落ち着いてから考えたい」──そんな女性のライフ・キャリアプランを支え、出産の可能性を広げる「卵子凍結」がいま注目されている。しかし、それは本当に新時代を生きる女性にとって“希望の光”なのだろうか──。
出産とキャリアの両立に悩む女性を、県を挙げて応援したい──。1月末、山梨県が健康な女性を対象に、卵子凍結費用の一部を助成する方針を固めた。昨年末には東京都でも、小池百合子都知事自ら全国の自治体初の試みとして同様の助成事業を公表。想定の5倍以上となる約1650人の申請があったと話題になった。
出産ジャーナリストの河合蘭さんが言う。
「以前から、病気の治療などで妊娠しにくくなる女性を対象に卵子凍結は行われていましたが、健康な女性が将来に備える『ノンメディカルな卵子凍結』については、否定する論調が強かった。しかし、不妊治療の大変さが知られ、東京都の助成制度が開始されたり著名人の公言も出始めたことから、少しずつ社会が容認するようになっています」
とりわけ多くの人が注目するきっかけになったのは昨年11月、タレントの指原莉乃がX(旧ツイッター)に行った投稿だ。
《31歳になりました 今年も今のところ結婚願望なし、卵子凍結済みで生活してます》という元アイドルによる突然の“表明”が大きな話題を呼んだのだ。
働く女性の増加につれ“子供をいつ産むか”はいまや一大テーマになっており、「子供はほしいけど、キャリアも大事にしたい」と考える働きざかりの女性は、「仕事を諦めて産む」か「産まない」の2択を迫られる。近年では医学の進歩もあり40才以上のいわゆる“高齢出産”も珍しくなくなった。そして、未受精卵を保存できる「卵子凍結」により、新たな選択肢が広がりつつある。
若いときに採取すれば精神的な安心に
極めて不規則な生活と激務を強いられる芸能界において、卵子凍結を公表したのは指原だけではない。お笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービー(40才)や、お笑いトリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴(35才)は「なるべく若い卵子を使った方が妊娠の可能性が高くなるから一応保険として、しておこうと思って」「(保存したことにより)逆にいま、仕事がんばろうって気持ちになった」と理由とともに卵子凍結を行ったことを表明した。
スポーツ界では、スノーボードの竹内智香選手(40才)が卵子凍結し、北京五輪に挑んだ。
女性の働き方や役割が多様化し、晩婚化が進む現代において、河合さんは「出産のタイムリミットがある女性にとって、選択肢が増えたのはいいこと」だと指摘する。
「卵子は年齢とともに老化し、個数も減っていく故に、30代後半を過ぎると妊娠のハードルは高くなります。そのため“子供を産みたいけれどキャリアは大事だし、パートナーも見つけないといけない”と焦っている女性が多くいるのが現実であり、彼女たちにとって福音と言えるでしょう」