警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザとヤクザがもめるとき、「内輪もめ」による事件について。
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暴力団組員が組員を襲う。敵対する抗争相手の組織や組員を襲撃するのは、義理を重んじるヤクザの世界で筋の通った話である。だがなぜ襲撃したのか、その理由がすぐにわからない事件が起きるのもヤクザの世界だ。
2月7日の未明、新宿・歌舞伎町にある指定暴力団極東会系事務所で事件が起きた。極東会系幹部の渡邊幸一郎容疑者(46才)が、同じ組の60代の幹部を殴って顔面骨折などのケガをさせたという。殴られた60代幹部は意識不明の重体だ。同じ組の幹部をその組の幹部が事務所内で襲うというこの事件、一見すると内輪もめだが、本当のところはどうなのだろう。
内輪もめによる事件といえば、2020年9月に長野県宮田村の飲食店の駐車場で、同じ組の幹部の腹を拳銃で撃ち、重傷を負わせて逃走するという事件がある。容疑者は指定暴力団絆會幹部の金沢成樹こと金成行容疑者、被害者も絆會の幹部だ。理由は組内のトラブルだ。銃撃された幹部は絆會を脱退し、六代目山口組へ戻ろうとしていたという。
六代目山口組では2015年、現執行部と反目する勢力が組を割って神戸山口組を結成、この神戸山口組からも2016年に任侠団体山口組(後の絆會)が分裂、以来、次々と有力団体が離脱している。容疑者は分裂してさらに分裂した先の団体である絆會傘下組織の前組長で、銃撃されたほうの幹部はその跡目、当代の組長だ。その組長が分裂前の団体へ、いわば反目する相手になろうとしたということらしい。
「金容疑者がその話を聞いて留まるように説得したが、聞き入れられず話がもつれ、犯行に及んだ」と某暴力団の元組長はいう。金容疑者は匿名の情報提供により、2月1日の未明に宮城県仙台市内のアパートで逮捕された。
「そもそも彼らは六代目の出身母体、弘道会主導の六代目山口組のやり方に我慢できず、親分である六代目からもらった盃を返して組を割って出て行ったヤツらだ。ところがそうして出てまで結成した神戸山口組にも我慢できず、さらに組を割って別団体の結成を繰り返した挙句、今度は元の鞘に収まろうなんてヤクザとしてどうなのか。こういうヤツらはもはやヤクザとはいえない」(元組長)。