多くの女性を悩ませる「膝痛」「股関節痛」。しかし「痛みがある」と一口に言っても、どの程度つらいのか、生活するうえで何がネックなのか、悩みや症状は人によってまったく違う。あなたに合った治療を受けるためには、どのようなポイントに注意すれば良いのか? ジャーナリスト・鳥集徹氏と『女性セブン』取材班が、前編では膝痛、後編では股関節痛についてレポートします。【前後編の後編。前編を読む】
* * *
足の付け根にあたる股関節は、大腿骨の頭にあるボール状の「大腿骨頭」と、骨盤側で大腿骨頭を覆うカップ状の「臼蓋(寛骨臼)」から成り立っている。そのつなぎ目のクッションの役割をする軟骨がすり減り、炎症を起こしたり骨が変形したりする症状が「変形性股関節症」だ。
その原因の約8割が、乳幼児期に股関節が充分に発育せず、臼蓋が大腿骨頭を覆い切れないまま成長してしまう「臼蓋形成不全」だといわれている。
臼蓋形成不全は女性に多いため、股関節の痛みに悩まされる患者の割合も、必然的に男性よりも女性の方が多くなる。痛みに加え、関節の可動域も狭くなるため、「足の爪が切りにくくなった」「あぐらがかきにくくなった」といった症状で気づくことも多い。そうした症状があった場合には、早めに整形外科にかかるべきだろう。
変形性股関節症も膝と同様、エアロバイクや水中歩行など負荷がかかりにくい運動や、肥満の場合は体重を減らすことが痛みの緩和に効果的だといわれている。しかし、医師たちは「変形性膝関節症ほどには、保存療法に重きは置かれていない」と声を揃える。船橋整形外科病院人工関節センター病院長で、股関節の治療を担当する老沼和弘医師はこう話す。
「20〜30代の人は、痛み止めをのんで運動療法を行えば、痛みが治まることが多いため、まずは保存療法を試してみることをすすめます。ですが、50〜60代以上や痛みの具合がひどい場合は、手術療法を検討して構わないと思います。特に70才を超えたら、早めに手術を受けた方がいい。人工股関節の耐用年数が大幅に延びたうえ、股関節症は進行性で歩行障害に直結する疾患であり、高齢者ほど進行が早く、術後の筋力の回復に時間を要するからです」
かつては、軟骨部分にあたるポリエチレンが摩耗するなどの問題があったため、人工股関節の耐用年数はおよそ15〜20年といわれていた。しかし人工膝関節と同様、耐用年数が大幅に延び、それに伴い人工股関節手術の適応となる年齢も低くなっているという。
「いまや人工股関節の耐用年数は『40年時代が始まった』といわれています。以前は40〜50代くらいまでの患者さんに対しては、臼蓋を切って回転させ、骨頭を覆う面積を広げることで軟骨をすり減りにくくする『骨切り術』が盛んに行われていました。
しかし、骨切り術はリハビリ期間が長いうえに根治するとは限りませんし、骨切り術をしたことのある股関節に人工股関節を設置することは容易ではないことがあります。ですからいまは、40〜50代でも人工股関節置換術をおすすめしています」(老沼医師)