北朝鮮の農村部などでは1日に1時間程度しか電力が供給されないため、近くの工場や病院などの電線から自宅に電源が供給されるように細工して電力を盗むという行為が蔓延していることが明らかになった。
なかには、工場の電気技師が住民らに電力を売るという違法行為を行ったことで逮捕されるケースも出ている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では首都・平壌でもさえも、一般家庭への電力供給は十分ではなく、ときには1日中停電することがあるが、少なくとも午前と夕方の食事どきには電力が供給されるようになっている。
このように、北朝鮮国内で停電は一般的で、農村部では夕食の準備のために1日1時間しか電力を供給されないことがざらだという。
しかし、病院や工場、その他の重要な政府施設には安定的に供給されていることから、北朝鮮北東部・咸鏡北道の病院の職員が住民らに「施設の電力施設から自宅まで電線を引く」ことを条件に「作業費と電気代」を請求していたケースが明らかになった。
この職員は住民の密告によって逮捕され、「国家の貴重な財産を私的に流用した」として強制労働所送りにされたという。
一方、同じ咸鏡北道で、朝鮮人民軍の駐屯部隊の電気技師が軍施設から住民ら6件の家に電力を供給する工事を行ったものの、作業が杜撰だったために漏電し、火災や感電事故で農民らが死亡するという痛ましい事故も起きている。
北朝鮮ではこのような「盗電」事件が後を絶たないことから、昨年末、朝鮮労働党幹部による対策会議が開かれたが、「取り締まりを強化する」ということ以外には、抜本的な対応策は出なかったという。北朝鮮は国連の制裁などで慢性的な燃料不足に陥っており、事態の改善は全く見通せない状況だ。