2024年2月15日、米国疾病対策センター(CDC)は、美容整形手術のメディカルツーリズムで人気の高いドミニカ共和国で施術を受けた人における、2009年から2022年にかけての手術後死亡事例が急増していることを報告し、警鐘を鳴らしている。
渡航先として1番人気のドミニカ共和国
日本では韓国への美容医療目的のメディカルツーリズムが活発になっているが、同じように米国からも中南米を中心とした国々で美容医療を受けるメディカルツーリズムの利用者が多い。高額な米国の医療費を避け、比較的安価に施術を受けることが可能な海外へと足を運ぶ人々は絶えない。
海外での施術においては感染症のリスクが定期的に問題になっており、最近でもメキシコでの感染症発生が死亡者の多発につながり、大きな問題になった。
今回、CDCの調査は、ドミニカ共和国で美容整形手術を受けた後に死亡したケースを対象とした。ヒフコNEWSの記事で報じたことがあるが、ドミニカ共和国は、米国から渡航して美容整形手術を受ける人が最も多い国という調査結果があった。その理由としては、米国からの距離の近さ、観光の魅力、美容医療の広告があるようだ。
1件を除いて全員女性
こうして判明したのは、調査期間中に93件の美容整形手術に関連した死亡が報告されていたこと。さらに、最近は件数が急増する傾向にあることだ。
具体的に見ると、1件を除いて全員が女性で、平均年齢は40歳だった。年間の死亡者数は2009~2018年は平均4.1人、2019~2022年は平均13.0人に増加し、2020年には最多の17人を記録した。
特に2019~2020年のピーク時には、美容外科手術後に死亡した24のケースがあった。この24人を詳しく調べたところ、24人全員が脂肪吸引を受け、22人は臀部脂肪移植術、14人は腹部形成術を受けていた。手術後24時間以内に亡くなったのが14人で、死亡までの平均期間はわずか2.8日。死亡に関連したクリニックは9カ所で、このうち2カ所のクリニックは2件以上の死亡事例があった。
解剖が行われた20人のうち、多くが塞栓性事象(脂肪塞栓症または静脈血栓塞栓症)による死亡であることが確認された。死亡者の中には、肥満や複数の施術を受けたことなど、リスクを高める要因を持っている人が多かった。肥満、糖尿病、喫煙、経口避妊薬の使用など、血栓リスクを高める条件が多数の患者に見られた。これらの条件を持つ人は特に注意が必要と見られた。
日本国内でも、脂肪吸引後の死亡事例が大きく注目されている。美容医療に伴うリスクを考えるときに、このような米国での調査結果は参考にしてよいかもしれない。
参考文献
Deaths of U.S. Citizens Undergoing Cosmetic Surgery — Dominican Republic, 2009–2022
CDC MMWR: Fatal Cosmetic Procedures in Dominican Republic Linked to Preventable Embolic Events
美容整形を海外で受ける前に知っておきたいこと、米国の研究から学ぶ潜在的なリスク
メディカルツーリズムの注意点 Vol.1 「米国美容協会が示す渡航先や医療機関の確認ポイント」
2022年、日本からの韓国メディカルツーリズムが5.6倍、コロナから急回復
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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