とはいえ、伊勢ヶ濱一門で師匠代行ということになれば、選択肢が限られる。部屋付き親方では大島部屋の玉垣親方(元小結・智ノ花)くらい。それ以外では借株親方や若手親方ということになってしまう。4月以降は一門預かりとなるが、木瀬部屋や春日山部屋の前例を見ても、いずれ宮城野部屋は消滅し、伊勢ヶ濱一門で手が合う朝日山親方(元関脇・琴錦)やモンゴル出身の大島親方(元関脇・旭天鵬)の部屋に単独吸収、あるいは弟子を分散移籍させることになるのではないかとみられている。前出・若手親方が言う。
「今回は弟子の暴行だけでなく、休場の理由をケガと偽ったり、協会の聴取に第三者を介入させて妨害しただけに、宮城野親方が厳しい処分を受けたのは当然。ただ、協会内には渡りに船と受け止めている人たちもいる。現役時代からの好き放題な言動があり、親方になる際には大相撲の伝統を守るといった主旨の誓約書に署名までさせられている。それでいて今回の不祥事ですから、これで白鵬を追放できる可能性も出てきた、と息巻く人たちもいる。親方の中には宮城野部屋に入門予定の力士を受け入れてもいいと言い出す親方がいるほどです」
執行部は、宮城野親方を二度と部屋の師匠として認めないのではないか、ともいわれている。また、間垣親方による代行や継承も認めないのは、鳥取城北ルートを基盤とした宮城野親方の復活を防ぐ意図もあるとみられている。相撲担当記者が言う。
「既存部屋を継承するための条件は幕内通算12場所以上か関取(幕内+十両)通算20場所以上の条件を満たせばいい。それが部屋を新しく興すとなると横綱か大関、三役通算25場所以上、幕内通算60場所以上になる。間垣親方は最高位が前頭5枚目で幕内通算26場所のため、既存部屋を継承できても部屋を興せない。
宮城野部屋が消滅しても間垣親方が部屋を興して宮城野親方ごと受け入れれば今の部屋の枠組みを残せるが、それができないということ。執行部が間垣親方の代行や継承を認めないことで、白鵬は“抜け道”がなくなったことになる。宮城野部屋が伊勢ヶ濱一門預かりとなる期間は未定で、最低10年ともいわれている。白鵬は理事長を狙うどころか、師匠として部屋を持つことさえ厳しい状況に追い込まれている」