試合は惜しくも引き分けに終わったが、チーム唯一の得点をアシストするパスを出した──これは、日本時間2月19日に行われたサッカーの試合で、日本代表の伊東純也(30才)が残した結果だ。辛口なメディアからも高評価を受けた伊東が立っていたのは、遠くフランスの地。これがもし日本であれば、伊東はピッチ上でプレーするどころか、試合会場に近づくことさえ許されなかったかもしれない。
伊東を巡っては『週刊新潮』が、昨年6月に大阪市のホテルで性被害を受けたとして、女性2人が伊東を刑事告訴したことを報じた。
「伊東はすぐに女性2人を『虚偽告訴』だとして刑事告訴。しかし、日本代表として参加していたアジア杯では、以降の試合出場はなく、途中でチームからの離脱を余儀なくされました」(スポーツ紙記者)
日本サッカー協会側は、離脱の判断に「スポンサーの声を参考にしたか」と問われ、「ゼロではありません。パートナーの皆さんへ配慮をしたのは事実です」とコメントした。
実際、報道後に伊東は、一部のスポンサーとの契約が終了したという。そういったことを背景に、伊東は前述の刑事告訴に加え、実損害が出たとして女性2人に2億円の損害賠償を求める民事訴訟も起こした。
前提として、性加害やハラスメントは、絶対にあってはならないことだ。そして、いまの伊東が「性加害を告発された人物」であることも事実だ。
だが、日本の代表チームからは「排除」された一方、所属しているフランス1部リーグのスタッド・ランスでは、トラブル発覚直後の2月11日の試合にスタメン出場。次の試合にも出場し、冒頭の通り主力として「活躍」している。
なぜ、日本とフランスで天と地ほどの差が生じるのか。国内外でサッカーの取材を長年続ける、ノンフィクションライターの藤江直人氏が解説する。
「フランス国内でも、伊東選手に性加害疑惑が持ち上がっていることは報じられていますし、多くのサッカーファンが知っています。それでも、伊東選手が試合に出場することを疑問視するような声は皆無です。“よく出してくれた!”と、クラブを称賛するような声もまったくありません。フランスでは、伊東選手が試合に出場することは当然のこととして受け止められています」
その背景には、疑わしきは罰せず、という「推定無罪」の考え方がある。
「間違ってはいけないのは、ヨーロッパ圏が日本に比べ、性加害に寛容というわけではありません。特にフランスは、かつて男性優位の傾向が強かった分、最近はジェンダー平等への意識がものすごく高まっています。それでも伊東選手が当たり前のようにプレーできるのは、“現段階では疑惑を報じられたのみ”という認識をしているからです。
これが日本となると、報道があった時点で、まるで罪が決定的なように世間が過剰に反応する。場合によっては社会的に抹殺されるほどの風潮は、危険さをはらんでいると思います。
その差が、日本とフランスとの、伊東選手への扱いの差に表れているのでしょう」(前出・藤江氏)
日本社会もまた、この騒動から学ばなければならないかもしれない。
※女性セブン2024年3月14日号