ライフ

《ヒット曲からも消えた?》少数派になった一人称の「俺」 「僕」が主流に、50代以上では相手を「お前」「こいつ」呼びする人も

(写真/イメージマート)

世代によって使う一人称も異なる(写真/イメージマート)

 昭和の時代は、自分のことを「俺」と呼ぶ人がいても何の違和感もなかったはずだ。しかし、最近では「俺」を使う人がすっかり減っている。また、人気ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)でフィーチャーされるヒット曲『ハイティーン・ブギ』など昭和の歌謡曲の歌詞に「俺」が登場するのは珍しくなかったが、最近のヒット曲ではあまり使われなくなった。“俺呼び”はどう変わってきたのか? そして今後は? 作家の甘糟りり子さんが考察する。

 * * *
 やや乱暴な仮説だけれど、「俺」という一人称は、ゆっくりと時間をかけて「あたい」みたいな位置付けになるはず。発する人のキャラクターを極端に演出するための、コスプレ的な言葉になると私は考えている。

 昭和の時代の中学生及び高校生男子ならプライベートではたいてい「俺」だった。学級委員になるような子でも、肩で風を切っているタイプでなくとも、「俺、塾に行くからもう帰るよ」「俺はやっぱり明菜派だなあ」といった感じでごく普通に使っていた。

 話題のドラマ『不適切にもほどがある!』は昭和61年(1986年)と令和6年(2024年)を行ったり来たりする物語。近藤真彦ことマッチがフィーチャーされ、劇中には『ハイティーン・ブギ』(1982年のヒット曲)が登場した。松本隆作詞の『ハイティーン・ブギ』はアイドルの歌ではあるが、つっぱりという設定。歌詞では「俺」が連発されている。念のために説明すると、つっぱりとは不良のこと。「つっぱっている」とは今風にいうと「イキっている」ことだ。

 自分を「俺」と呼ぶ人は、相手の女子についてはもちろん「お前」呼びである。マッチも『ハイティーン・ブギ』で「お前」が望むならツッパリをやめると歌っている。「お前」呼びにはいいたいことはたくさんあるが、このフレーズとメロディはやっぱりなつかしくて甘酸っぱい気持ちになる。

 ちなみに、当時人気を二分した田原俊彦のヒット曲『ハッとして!Good』は高原とかテニスコートなんかが舞台で、一人称二人称は「僕」と「君」だ。あの頃、高原やテニスコートはまだ特別な気取ったもので、マッチの歌う世界観の方が圧倒的に「男子の通過点」だった。たとえバイクに跨って海まで飛ばさなくても、おぼっちゃんでも学級委員でも、男子たるもの心根にはナナハンが置いてあるべき、そんな世の中だったと記憶している。

 従って、今の五十代以上にはプライベートで「俺」という人は多い。そして、親しい間柄では「お前」「こいつ」を使うことに何の引っ掛かりもないのだ。これについては別の機会にみっちり書きたいのですが。

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン