放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」観覧から東京漫才、江戸前の演芸について綴る。
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『週刊ポスト』2024年3月8・15日号で私が音頭を取って8ページにわたって「東京漫才」を大特集させていただきました。なつかしい笑い声がよみがえってくると思います。
そんな時、進化する東京漫才を象徴するような東京ドームの歴史的一夜。私はいまだに興奮が収まりません。ドーム史上、これだけの人数が集まったのを見たことがありません。リトルトゥース(リスナー)集結5万3000人全国201か所のライブビューイングと生配信で計16万人が生で楽しんだ2月18日、そう!! 「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」である。
ラジオのお客さんというのは本当に優しいしほど良く濃い。テレビ番組では告知したところでいいところ100人(それも無料で)がせいぜい。その点ラジオのファンは全国からやって来てくれる。「今晩は、ラジオモンスターです」と若林が現われ、自転車でいきなり球場一周した時の姿を見て涙がこみあげそうになった。拍手、大歓声、超満員。私も思わず「若さまーッ」。
その勇姿を見ての嫉妬からか40年前が頭をよぎった。たけし36歳、高田35歳で「東京ドーム」やりたかった。あの時の熱量だったらいけそうな気もした。最後にたけしがホースで水を思い切り客席に撒き散らしたり……空想ではあるが「若い」って素晴しい。
トークあり、春日vsフワちゃんのプロレスあり、若林と星野源の歌にしっとり。阿佐ヶ谷・高円寺にふたりいた頃、なに者でもなかった、今ここ東京ドームのセンターに立って歌う2人。現代の浅草キッドだ。こんな夢も見られるのだから芸ごと、芸能、人気商売は何があるか分からない。最後の最後にはセンターマイクが出てきて、若林・春日の30分越えの漫才である。
若林の良さはなにより品のあるところ、まったく卑屈にならないところ、「八丁堀だから」と深夜放送で言う江戸前なバックボーンがあるところ。東京の人間はこれが一番好きだ。大阪の“松本風”が止んだ今、根っからの東京人の私はこう思う(今まで土足で入ってきた大阪人に気をつかいすぎた。ここは東京である)。東京の文化を私はキチンと守り攻めこんでいきたい。
1923年(大正12年)、関東大震災で多くの寄席が焼失したが、翌年噺家が集結し「落語協会」が設立された。この春で「落語協会創立100年」です。3月からさまざまな企画も寄席であるようなのでお足をお運び下さい。そしていよいよ3月1日には塙監督の『漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々』が公開されます。オードリーと対極にあるような浅草芸人達の姿を描いたドキュメンタリーです。PS 東京の笑いは太田(爆問)、有吉、若林がいるから安心だ。
※週刊ポスト2024年3月8・15日号