コロナ禍での自粛、タイパ重視をきっかけに、急速に注目度が高まっているノンアル・微アル飲料。健康志向もまた後押しをしている。昨年厚生労働省が作成したガイドラインによると、生活習慣病のリスクを高める純アルコール量の目安は1日あたり男性40g以上、女性20g以上。純アルコール量20gは、ビール中瓶1本に相当する。
「こうした健康志向の高まりもあり、ノンアル飲料の販売金額は右肩上がり。中心のビールテイストに加え、チューハイテイストも伸びたことにより市場が活性化。その結果、全体のクオリティが上がって種類も増え、ノンアルがポジティブな選択肢になりつつあります」(市場アナリスト・木地利光さん)
注目度は高まっているとはいえ、「でも、おいしくないんでしょ?」という声もあるだろう。そこで、お酒を愛する4人がノンアル飲料をジャンル別に飲み比べした。今晩選ぶべき1本がわかります!
【飲み比べに参加した人】
ごはん同盟・シライジュンイチさん/好きなお酒は日本酒、ビール、ハイボール。炊飯系フードユニットで活動。著書に『ごきげんな晩酌』(山と溪谷社)など
日本酒ライター・関友美さん/好きなお酒は日本酒、ビール、ワイン。きき酒師、シードルマスターの資格を持ち、酒蔵のスタッフとしても活動する
ワイン&フードコーディネーター・高橋はるなさん/好きなお酒はシャンパーニュ、赤ワイン。J.S.A.ワインエキスパート。ワインスクールの企画や講師も務める
『カクテルワークス』CEO・宮澤英治さん/好きなお酒はビール、ワイン。日本初となる本格ロー・ノンアルコールバーなどを、東京を中心に10店舗経営する
●採点方法/各商品を識者4名、編集スタッフ3名の計7名で審査。「総合的なおいしさ」を100点満点で採点し、7名の平均点で順位を出しています。各ジャンルの評価ポイント3項目については、それぞれ10点満点で評価し(数値が高いほど強い)、同様に7名の平均点を記載しています
※商品は首都圏の大型スーパーやネットストアで1月中旬に購入したもので、価格は編集部調べです
※評価コメントは、(シ)がシライジュンイチさん、(関)が関友美さん、(高)が高橋はるなさん、(宮)が宮澤英治さんです
【ビール風】ノンアル人気の高まりに合わせ、個性が豊かに
2009年に初めて誕生したノンアルビール。近年は大手ビール会社が新商品を続々と発売し、本格的な味から個性派まで幅広くラインアップ。選ぶ楽しさも増えた。
1位に選ばれたのは『零ICHI』(キリン 350ml 140円)だ。これについて4人は、
「少しグリルしたオレンジの香りやコク、苦味が感じられる本格的な味わい」(宮)
「苦味がほんのり効いていて、ビールの味に近いですね」(シ)
「香りの再現度が高い」(高)
「まろやかな麦の風味が感じられます」(関)
とコメントしている。
【機能性ビール風】健康に配慮したヘルシーさで大注目
健康志向の高まりで、種類も豊富に。カロリーや糖質ゼロはあたりまえ、+αの健康にうれしい機能で、罪悪感なく飲める。
1位に選ばれたのは『ヘルシースタイル(特定保健用食品)』(アサヒ 350ml 140円)だ。食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにする健康機能があるこちら。審査員は、
「モルトの香りはありつつ、苦味は少なめ」(宮)
「すっきりした味わい。ビール以外の味が残るのが少し気になる」(シ)
とコメントしている。
【レモンチューハイ風】甘さを抑えた食事と合う味わいが新定番に
甘さ控えめのものが多く、晩酌としても取り入れやすい。「近年、ビール以外のノンアル飲料では、レモンチューハイタイプが好調」(市場アナリスト・木地利光さん)。
1位に選ばれたのは、『のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール』だ。これについて審査員は、
「すっきりとした飲み口で満足感がありますね」(シ)
「レモン風味と炭酸のシュワッと感のバランスが飲みやすい」(高)
「レモンジュースとの差別化がしっかりされています」(関)
「プライベートでもよく飲んでいます」(宮)
とコメントしている。
【梅酒風】再現度はハイレベル!
ノンアル梅酒といえば「チョーヤ」のイメージだが、梅酒のコクをしっかり再現したサントリーに軍配。
1位に選ばれたのは、『まるで梅酒なノンアルコール ボトル缶』(サントリー 280ml 210円)だ。これについて審査員は、
「まったりとした甘味がお酒に近い印象。完成度が高い!」(高)
「甘めなのでロックやクラッシュアイスで飲みたい」(関)
「ソーダで割って飲みたい」(シ)
と、コメントしている。
【フルーツサワー系】ゆずなどさわやかな柑橘系が上位に
すっきりとした飲み口の柑橘系フレーバーが好評で、上位を独占。果実の香りや風味をうまく再現し、完成度が高い商品も数多く登場している。
1位に選ばれたのは、『酔わないゆずッシュ』(チョーヤ 350ml 153円)だ。これについて審査員は、
「飲むとゆずの香りが広がり、ナチュラルなおいしさが味わえます。炭酸を抜いてロックで飲んでみたいと思わせるほど、完成度が高い」(宮)
「香りがとてもよく、やや酸っぱめ。奥行きのある味わいがいいですね」(関)
「とてもおいしい!」(シ)
とコメントしている。
【ワイン風】再現度は低めだがフルーティな味は高評価
「商品自体はおいしいものの、ジュースとの差別化が難しい」という意見も。すべて炭酸入りという点も、ワイン好きには物足りない要因かも。
1位に選ばれたのは、『モクバル 洋なし&パインmix』(メルシャン 250ml 284円)だ。これについて審査員は、
「カクテルとしてこれはアリ。フルーツ系サワーが好きな人に好まれそう」(シ)
「イメージは、南国リゾートのウエルカムドリンク」(高)
「洋梨のふくよかな甘味が広がって、おいしいですね」(宮)
とコメントしている。
【日本酒風】発展途上で今後に期待
まだまだ商品数が少ない日本酒風は、酒のプロたちからはやや辛めの採点結果に。
1位に選ばれたのは、『スペシャルフリー』(月桂冠 245ml 410円)だ。これについて審査員は、
「ひと口目の味わいは、かなり日本酒に近いと感じました。技術力の高さに感心」(シ)
「米を使っていないのにこの味ができることに、びっくり!」(関)
とコメントしている。
【その他】ハイボール風は再現度高し!
ハイボール風の2商品は再現度の高さが高評価。カシスオレンジ風やジントニック風は再現度は低めだが、味の評価は好みによって分かれた。
1位に選ばれたのは、『のんある晩酌 ハイボール ノンアルコール』(サントリー 350ml 171円)だ。これについて審査員は、
「華やかな樽のような香りと、アルコールを感じさせる厚みのある味わい。再現度の高さに驚きました」(高)
「ウイスキーのスモーキーな香りを感じますね」(シ)
とコメントしている。
【微アルビール】
1%以下でも、微量のアルコールが入るだけでお酒感がグンとアップ。ノンアルとの違いに驚き、飲みごたえもあると高評価に。
1位に選ばれたのは、『ビアリー 香るクラフト』(アサヒ 350ml 195円)だ。アルコール分0.5%のこの商品ついて審査員は、
「クラフトビールのような華やかな香り」(関)
「低めのアルコールを香りが補っていて完成度が高い」(シ)
「ホップの香りが広がる」(宮)
とコメントしている。
飲み比べを終えての総評
「アルコール飲料からアルコールを除くなど、技術の進歩で再現度が高くなっています。甘さ控えめで食事と合うものも増えました」(高)
「大手メーカーのビール風とフルーツサワー風は、再現度の高いものが多数。入手しやすさやコスパを考えると、かなりがんばってますね」(宮)
「ビール風に旨味とコクを求めると物足りなさもありますが、喉ごしは満足点。レモンチューハイ風は、全体的においしかったです」(シ)
「ビール風はキモとなる苦味を感じるものも増えた印象。ビール風に比べて、ワイン風や日本酒風は、今後の進化に期待したいですね」(関)
撮影/武井メグミ 取材・文/青山貴子
※女性セブン2024年3月14日号