春の番組改編期に向けて新番組が続々と発表されているが、テレビ業界で注目が集まったのは8年ぶりに復活するフジテレビの『すぽると』。「キャプテン」として千鳥が起用されたのだ。これまでも千鳥を多くの番組で出演させきたフジテレビ。さらに起用が進む背景とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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フジテレビが8年ぶりにスポーツ番組『すぽると』を復活させ、新たに千鳥が「キャプテン」という肩書きで出演することを発表しました。
千鳥の2人は高校時代、大悟さんが野球部、ノブさんがサッカー部に所属していたものの、これまではスポーツ番組の印象が薄く、実際に「レギュラー出演は初めて」という意外なキャスティング。ただ大谷翔平選手らの世界的な活躍に加えて、今夏にパリ五輪が開催されることも含め、期待の大きさがうかがえます。
注目すべきは、「2月9日から同じフジテレビの『酒のツマミになる話』MCに大悟さんが就任したばかり」というタイミングであること。松本人志さんの活動休止に伴う対応ですが、大物の代役となるポジションに起用されたところに評価の高さがうかがえます。
フジテレビはその他でも千鳥が出演するレギュラー番組を3つ放送。しかもその『千鳥のクセスゴ!』『千鳥の鬼レンチャン』『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(カンテレ制作)は、いずれも冠番組である上にゴールデン・プライム帯で放送されています。さらに、『千鳥のクセスゴ!』『千鳥の鬼レンチャン』の2番組は、休日で視聴者の多い日曜夜の放送であり、“局の看板タレント”という位置付けがわかるでしょう。
ちなみに民放他局のレギュラー番組を見ていくと、『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)、『ぴったり にちようチャップリン』(テレビ東京系)、『相席食堂』(ABC)、『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)、『千鳥かまいたちアワー』(日本テレビ系)は、すべて深夜帯の放送であり、フジテレビの起用が突出している様子がうかがえます。
さらに、千鳥は昨夏も4年ぶりに復活した『FNS27時間テレビ』の総合司会に起用されたほか、大型お笑い特番の『お笑いオムニバスGP』や『THE MANZAIマスターズ』にも出演しました。なぜフジテレビだけこれほど千鳥を重用しているのでしょうか。
テレ朝と日テレは深夜帯のみで放送
まずフジテレビ系列における出演番組の開始時期をあげていくと、それぞれレギュラー放送は『千鳥のクセスゴ!』が2020年10月、『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』が2021年4月、『千鳥の鬼レンチャン』が2022年5月にスタート。
さらに2023年も7月に『FNS27時間テレビ』の総合司会を務め、2024年も2月9日に『酒のツマミになる話』のメインMC就任、3月31日に『すぽると!』のキャプテン就任と、2020年代は毎年新たな起用があることに気づかされます。
これはフジテレビが「2020年代に入って千鳥をバラエティの軸に据えて勝負している」ということ。その背景には2020年春の視聴率調査リニューアルがありました。これによって「番組制作はスポンサー受けのいいコア層(13~49歳)の個人視聴率重視」という方針に変わり、スポンサー営業する上で千鳥がそのシンボルになっていったのでしょう。
一方で対照的なのがテレビ朝日。2019年4月に月曜深夜帯でスタートした冠番組『テレビ千鳥』を2020年10月に日曜プライム帯の22時25分に移動したものの、わずか1年半後の2022年3月に木曜深夜帯へ再移動しました。番組内容と放送時間帯の相性があるとは言え、テレビ朝日は他のレギュラー番組も含めて千鳥をゴールデン・プライム帯で起用していません。
また、日本テレビは2021年1月に『千鳥かまいたちアワー』(初期の番組名は『千鳥vsかまいたち』)を日曜昼の時間帯でスタートさせ、同年10月に土曜深夜帯へ移動して現在まで放送を続けています。
同番組は“千鳥とかまいたちの共演”を前面に押し出したコンセプトであり、これはフジテレビ『千鳥の鬼レンチャン』と同じ図式。しかし、フジテレビは日曜ゴールデン帯を選び、日本テレビは土曜深夜帯での放送を続けているところに、千鳥に対する位置付けの違いを感じさせられます。