まるでゲームに登場する迷宮のようなターミナル駅をネットではしばしばダンジョンと呼ぶが、新宿や渋谷だけでなく、池袋もダンジョンと呼ばれている。池袋ダンジョンの不思議さをもっとも象徴するのが、JR池袋駅を降りて東へ出ると西武鉄道の駅と西武百貨店があり、西へ出ると東武鉄道の駅と東武百貨店があり、西と東の文字が同時に現れて混乱させられる。その池袋駅の特徴を覚えるのに長らく重宝されてきたのが、池袋駅東口からすぐ見える家電量販店ビックカメラのCMソングだ。そのCMソングが池袋駅で発車メロディになった理由や狙いについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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2024年3月1日、JR山手線の池袋駅で使用されている発車メロディが家電量販店ビックカメラのCMソングへと切り替えられた。JR東日本へ料金を支払う広告契約を結んだようだ。
ビックのCMソングは各地域で歌詞が異なっているものの、頻繁に流されているので耳にしたことがある人は少なくない。特に、池袋駅の東に西武があり、西に東武がある池袋駅周辺の様子を不思議な池袋と歌い出すフレーズは、かなり浸透している。
ビックは池袋を地盤にする家電量販店として知られるが、2022年12月にビックの経営を揺るがしかねない事態が勃発した。
池袋駅の顔ともいえる池袋西武の株主だったそごう・西武が、株式の売却を表明。その売却先はアメリカの投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループとされ、同ファンドはヨドバシカメラホールディングスへと再売却すると報じられた。
池袋駅発車メロディにこめた思い
ヨドバシがそごう・西武の株式を取得すれば、当然ながら西武池袋本店にも大きな影響を及ぼす。これまでカバンや服、化粧品を販売していたフロアは、ヨドバシの主力となっている家電・カメラ・パソコン・スマホといった売り場へと転換されることは想像に難くない。
テレビ・新聞・ネットなどのニュース媒体は、こうした状況を”池袋の家電量販店戦争”と形容して報道。そのニュースは世間から大きな注目を浴びた。また、豊島区の故・高野之夫前区長が池袋西武にヨドバシが進出することに異を唱えたことも世間の耳目を集める一因になった。