裏金問題をめぐってリーダーシップを発揮できず、支持率は超低空飛行の岸田文雄・首相。もはや党内で言うことを聞く者もいなくなりつつある。そんな危機的状況に追い詰められた岸田首相は、ひそかに党内の反対派粛清の「武器」を握ろうと動き出した。
3月17日開催の自民党大会で岸田首相は「派閥を二度と復活させない」という運動方針案を採択する方針だが、同時に、裏金問題を起こした議員を処分できる党則改正の準備を進めている。この党則改正で、党内の反対勢力に圧力をかけようとしているのだ。
菅義偉・前首相ら岸田首相の敵対勢力が結集
だが、党則改正は逆に岸田政権の寿命を縮めかねない。
自民党内からは、「党則改正をするなら、事務局長が略式起訴された岸田派の会長だった首相自身も処分の対象にならなければ筋が通らない」(二階派幹部)という反発があがっているからだ。
3月1日には、岸田首相の政敵である菅義偉・前首相が安倍派の萩生田光一・前政調会長、茂木派の加藤勝信・前厚労相、二階派の武田良太・元総務相、無派閥の小泉進次郎・元環境相と会食した。自民党職員を長く務めた政治評論家・田村重信氏はこう指摘する。
「岸田首相の(党則改正の)動きに対抗し、敵対勢力が動き始めた」
党大会を前に決戦ムードが高まる中、首相の責任追及の口火を切ったのは地方議員たちだった。
2月17日の自民党大分県連大会では、地元議員から「野党に下るきっかけになりかねない」と裏金問題への対応に批判が集中。来賓の小渕優子・選対委員長は「2009年の野党転落を思い返す。自民党の危機と言える」と謝罪に追われた。
自民党大分市議が語る。
「私は野党に転落した時の自民党時代も経験しているので、余計に危機感が強い。岸田さんにそれを跳ね返すだけの力があるとは思えない」
別の大分市議は、「来年には市議選がある。このままでは落選だ」と怒りを口にした。
事実、自民党は地方選で大苦戦中だ。「保守王国」と呼ばれる群馬県の前橋市長選(2月4日)では自民党推薦の現職が野党系新人にまさかの大敗を喫した。裏金批判で保守票が逃げたためだ。