東日本大震災から13年。「週刊ポスト」はこれまで被災地を定点撮影することで、復興の歩みを伝えてきた。復興行政の遅々として進まぬ現状を目の当たりにしつつも、その一方で、故郷を立て直そうと奮闘する人々が作りあげてきた風景は力強く変わった。
岩手県陸前高田市の広田湾に面した場所はかつて、日本百景にも指定される「高田松原」と呼ばれる景勝地だった。ところが、2011年3月11日の東日本大震災による津波の直撃を受け、約7万本あった松の木ほとんどがなぎ倒された。そんななか、松原の西端にある一本だけが立ったままの状態で残り「奇跡の一本松」と呼ばれた。定点撮影の場所のひとつには、この場所を選んだ。
2012年2月18日に撮影した「奇跡の一本松」は、震災から約1年を経て復興の象徴になった。枯れてきた一本松に毎週車で何時間もかけて「甦りの水」を運ぶ人の姿も見られたが、津波の影響で長時間、水に浸かっていたことや土壌の塩分濃度が高くなっていたことなどから生きた状態で一本松を保存することはできなくなっていた。
そして2015年2月11日撮影の「奇跡の一本松」は、一度枯れた後に幹を防腐処理し、枝葉をレプリカで2013年に復元したもの。一本松の背後には、最大12メートルに及ぶ陸前高田市の嵩上げのため巨大なベルトコンベアが設置されたのが見える。
震災から13年が経とうとする2024年2月14日撮影の「奇跡の一本松」は、2021年に全面供用が開始された高田松原津波復興祈念公園のなかにある。背後にある建物は、一本松と共に震災遺構となった、被災した当時のままのユースホステルだ。
一本松以外の定点撮影の場所も紹介しよう。能登半島地震から2か月。北陸の被災地が立ち直るにはまだ長い時間がかかるかもしれないが、着実に前へ進んできた東北から、未来への希望を見出せるのではないか。