テレビ局のこの春の改編期で「音楽番組」の関する編成が注目を集めている。民放各局が新たな音楽番組を立ち上げたのだ。音楽番組は視聴率がとれないことから2010年代まで「お荷物」と言われていた。なぜいま音楽番組が増えているのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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3月に入って民放各局が春の番組改編発表を行い、4月スタートの新番組が次々に明かされています。
その中で今春のポイントになりそうなのが音楽番組。日本テレビが『with MUSIC』(土曜20時台)、フジテレビが『ミュージックジェネレーション』(木曜19時台)をスタートさせ、TBSも『CDTV ライブ!ライブ!』の2時間拡大(月曜19時台~20時台)を発表しました。
もともとテレビ朝日は『ミュージックステーション』(金曜21時台)が放送されているため、今春以降は民放主要4局のゴールデンタイムに音楽番組がそろい踏みすることになります。昨秋にもフジテレビが水曜23時台に『週刊ナイナイミュージック』をスタートさせたばかりであり、ここにきて音楽番組への期待が高まっている様子がわかるでしょう。
しかし、2010年代まで「音楽番組はお荷物」と言われ、唯一残された『ミュージックステーション』も何度となく打ち切り説が流れ、「いつゴールデンタイムから絶滅してもおかしくない」とまで言われていました。そこから今春の活況に一変した背景にはどんなことがあるのでしょうか。
ライブコンテンツとしての再評価
まず大まかに音楽番組の歴史を振り返ると、最盛期は1980年代。歌謡曲、ニューミュージック、アイドルソング、ロックなどの幅広いヒット曲が生まれ、『ザ・ベストテン』(フジテレビ系)、『ザ・トップテン』(日本テレビ系)、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)などが人気番組となっていました。
しかし、その3番組が1989年から1990年にかけて相次いで終了。それまでの勢いは消え、「ヒット曲は次々に誕生しているのに音楽番組は定着しない」という低迷期に入りました。
その流れを変えたのが、1994年スタートの『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)と1996年スタートの『うたばん』(TBS系)。それぞれダウンタウン、石橋貴明&中居正広のトーク力を生かしたバラエティ要素の濃い音楽番組として人気を集めましたが、『うたばん』は2010年、『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』は2012年にレギュラー放送を終了しました。
2010年代はテレビ番組全体が視聴率低下に苦しむ中、音楽番組はさらに低迷。唯一と言っていい2015年スタートの新番組『水曜歌謡祭』(フジテレビ系、水曜20時台)が「わずか半年間でゴールデンタイムから撤退した」ことが音楽番組の難しさを象徴していました。
その理由は「人々の好みが細分化して国民的ヒット曲が生まれなくなった」「サブスクや動画で音楽を楽しむ人が増えてテレビの放送時間に合わせてもらえなくなった」などと言われ、「もはや音楽番組の復活は不可能だろう」とも言われていたのです。
そんな音楽番組の苦境が一変した最大の理由は、ライブコンテンツとしての再評価と若年層の支持の2点。