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近鉄ファンの夢を砕いたロッテ首位打者が語る「10.19決戦」の秘話 同点HRは「たまたま」 「余計なことしやがって」とヤジも

現役時代の高沢(時事通信フォト)

現役時代の高沢(時事通信フォト)

 現役時代にロッテ、広島でプレーした高沢秀昭(65)は引退後に、ロッテのコーチ、少年野球教室『マリーンズ・アカデミー』のコーチを経て、61歳の時に保育士を目指すことを決断。2022年から横浜市内の認可保育園「大豆戸どろんこ保育園」(社会福祉法人どろんこ会運営)に勤務している。【前後編の後編。前編を読む

 1980年代のパ・リーグは注目度が低かったが、高沢は同リーグを代表する強打者だった。1988年には打率.327、14本塁打、64打点で首位打者、最多安打のタイトルを獲得している。外野手でも強肩を武器にゴールデングラブ賞を3度受賞。1987年には27盗塁をマークした。トリプルスリーを狙える実力を持っていると評されたが、本人は苦笑いでかぶりを振る。

「そんなたいした選手じゃないです。本塁打を多く打てるわけではないし、27盗塁も必要のない場面やノーマークの時に走っていたので……。首位打者も運が良かったんです。思い切り振った当たりがポテンヒットになったり、ボテボテの内野安打になったりしていたので。ゴールデングラブ賞もたまたま。守備固めでもっとうまい選手がたくさんいましたが、ある程度試合に出場しないと対象外になる。僕は規定打席をクリアした兼ね合いで取れただけです」(高沢。以下同)

 取材した1時間の間、自身の野球人生を振り返ってもらうと、「たまたまです」、「運が良かった」という言葉を何度も繰り返していた。謙虚な性格であることは間違いない。同時に、超一流の選手たちと間近でプレーしてきたことも影響しているのだろう。

「社会人野球からドラフト2位でプロ入りしたので、即戦力と期待されて一軍の練習に参加しましたが自信を失いました。有藤通世さん、レオン・リー、張本勲さんとそうそうたる顔ぶれで。打球の速さに驚きました。レベルが違いましたね。他球団も凄い選手ばかり。南海の門田(博光)さんは体が小さいけどパワフルで。逆方向の左翼に打った打球なのに右打者が引っ張ったように伸びていく。投手も山田久志さん、東尾修さん。西武は渡辺久信、工藤公康、郭泰源、石井丈裕と凄い投手ばかり。

 球の速さで言えば柴田保光さん(西武、日本ハム)も強烈でした。広島でプレーした時は前田智徳が印象的でしたね。高卒で入団したばかりだったけど、打つこと、走ること、守ることとすべてが凄くて直すところがない、今まで見たことがない選手でした。性格は気難しくてちょっと変わっていたけど(笑)。天才肌でしたね」

 強烈なインパクトを受けた選手の名前が上がる中、最も印象的な選手が三冠王を史上唯一の3度獲得した落合博満だった。1980年から7年間一緒にプレーしたが、その凄みを証言する。

「足の力が凄かったです。ふくらはぎを見ると大根みたいに太くてがっちりしている。だから打ちに行く際、軸になる後ろの足が全く動かない。体が前に突っ込まないから遅い球にも反応できる。前の腕も筋肉が隆起していました。もちろん技術もすごかった。バットに力が伝わる打ち方で、反対方向の打球が伸びる。

 練習は量より中身を重視していた印象がありますね。『バット、振ってみて』って言われたことがあったので、1回振ったら、『10回素振りしてはぁ、はぁ、言うぐらいじゃないとダメだ』って言われました。1日に何百回、千回以上スイングしていましたけど、『そんなんじゃうまくならんぞ』って。有言実行で凄い方でした」

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