史上最多45回の優勝という数字を考えれば、本来は横綱経験者の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)クラスでなければ指導できる“格”ではない。
「ただ、伊勢ヶ濱親方は2年後に65歳定年を迎え、部屋は横綱・照ノ富士が継承するのが既定路線。かつての日馬富士の暴力事件の禍根もある同郷の後輩のもとで格下扱いというのは、白鵬には受け入れがたい屈辱となります」(同前)
もともと執行部と関係は悪いが、八角理事長(元横綱・北勝海)の体制は長くてあと2期(4年)。世代交代が進めば周りは横綱経験すらない格下の親方ばかりになり、「白鵬は自分の天下がくると思っていたはず」(同前)だが、目算は大きく狂った。
ベテラン記者は「執行部と対立の末に退職に追い込まれた貴乃花親方の姿と重なる」と話す。
「もともと白鵬は“お米が切れる(金払いがいい)”として、若手親方に人気があった。でも、貴乃花と同様に上昇志向が強すぎて、周りが見えていない。今回の件で、求心力は一気に低下した」
貴乃花親方は2010年理事選の“貴の乱”で立候補を強行して当選。同年に協会は野球賭博事件に揺れ、翌年には八百長問題も噴出した。当時、水面下で話題になったのが、貴乃花親方による「第二相撲協会設立」だった。
「腹心の大嶽親方(元関脇・貴闘力)が野球賭博で廃業したこともあり、貴乃花が一門の若手親方らを引き連れてガチンコを標榜する第二相撲協会を設立すると真しやかに囁かれた。この時はガチンコの放駒理事長(元大関・魁傑)の角界浄化の方針などがあって分裂は回避された」(同前)
今回もまた、土俵際からの“白鵬の乱”が起きないか、注目されている。