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【鳥山明さんの真実】原稿を紛失されても怒らない「謙虚さ」、変わらなかった「地元への愛着」、一貫して描き続けた「家族の力」

鳥山明さん(時事通信フォト)

近隣住民からは「あきさん、あきさん」と慕われていたという(時事通信フォト)

 漫画家の鳥山明氏が3月1日、急性硬膜下血腫のため68才でこの世を去った。1980年に『Dr.スランプ』を発表すると、瞬く間に大ヒット。その後、アイディア出しと作画に疲れ果てた鳥山さんが担当編集者に「作品を終わらせて欲しい」と頼み込むと、「3か月後に新連載を始めるなら終わらせてもいい」という条件が提示された。そして、実際に『Dr.スランプ』は連載終了となり、きっちり3か月後に新連載として始まったのが『ドラゴンボール』だった。【前後編の後編。前編を読む

『ドラゴンボール』は世界80か国以上で翻訳され、累計発行部数は約2億6000万部に到達。『Dr.スランプ』を上回る爆発的人気を誇る作品となった。

 相次ぐメガヒットは鳥山さんに莫大な資産をもたらした。『Dr.スランプ』の人気で1981年の所得金額は5億3924万円、翌1982年は6億4745万円を記録し、長者番付の「その他部門」で2年連続トップ。その後、『ドラゴンボール』は世界中で読まれ、漫画だけでなく、アニメや映画、グッズやゲームなどを展開。2019年の米紙『サンフランシスコ・クロニクル』は、『ドラゴンボール』関連商品の総売り上げは230億ドル(約3兆3000億円)に達すると試算した。

「鳥山さんはどれだけ有名になっても、トレーナーにジーンズ、キャップ姿のどこにでもいる人でした。自宅ではどてらを着て、コタツで漫画を描くこともあったそうです。ブランド品にも興味はなく、プラモデル作りやモデルガン、ヘルメットなどミリタリーグッズのコレクションが数少ない趣味。携帯電話を持たず、連絡はパソコンのメールというミニマリストでもありました」(鳥山さんの知人)

 謙虚な人柄を物語る逸話がある。『Dr.スランプ』の絶頂期、担当編集者が原稿を紛失したときのことだ。

「作家にとって生原稿は命のようなもので、紛失は絶対にあってはならないこと。漫画家によっては、訴訟問題にまで発展しかねません。なのに鳥山先生は『コピー取ってますから、もう一度送りますよ』と、まったく怒らなかった。いつも謙虚でサバサバした人格者でした」(漫画誌関係者)

 地元への愛着も変わらなかった。連載を持つと上京する漫画家が多かった中、鳥山さんは生まれ故郷の清須市を離れなかった。

「本人は地元から出ない理由を“面倒だから”と話していましたが、実はそうじゃないんです。『Dr.スランプ』の舞台の“ペンギン村”は自宅周辺を参考にして、主要キャラもご近所さんがモデルになっていました。『ドラゴンボール』も同じで、“亀仙人”にいたっては、見ればこの人がモデルとすぐにわかるくらい特徴が生かされています。地元に恩返しがしたいという気持ちが強かったようです」(前出・鳥山さんの知人)

 近隣住民からは「あきさん、あきさん」と慕われていたという。昨年10月には、清須市の市制20周年を記念するロゴデザインの制作を担当。市の担当者がダメ元で依頼したところ、鳥山さんは快諾した。

「あきさんが自宅で転倒した」

 1995年に『ドラゴンボール』の連載が終了すると、心身への負担を考慮して長期連載から身を引き、読み切りや映画版の脚本などを担うようになった。

「長年、寝食を惜しんで情熱的に仕事に取り組んできました。いくらゆとりができたとはいえ、それまでの無理がたたったりはしないかと、奥さんは不安に駆られることも多くなっていました。鳥山さんが無茶する性格であることも知っていたし、1日1箱というヘビースモーカーだったことも心配の種だったそうです。還暦を迎えた2015年頃からは“そろそろ引退したら”と促すことも増えたそうです」(前出・鳥山さんの知人)

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