放送1500回を超える国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の声優でマルチタレントのTARAKOさんが急逝した。音楽とお酒と舞台をこよなく愛し、万人に愛された人気者だった。“永遠の小学3年生”が人知れず抱えていた葛藤と、壮絶な闘病の日々──。【前後編の前編。後編を読む】
「TARAちゃんと初めて会ったのは、もう何十年も前のことです。隣のスタジオにいた彼女の声を偶然耳にして『おや、これはいままでに聞いたことのない不思議な声だ』、『話し方も面白い』と思いましてね。すぐに彼女のマネジャーにお願いして、マイクで声を録らせてもらったんです」
こう振り返るのは音響監督として数々の声優を発掘してきた斯波重治氏(91才)。3月4日に急逝したTARAKOさん(享年63)が声優としてデビューするきっかけを作った、アニメ音響の第一人者である。
「その後も彼女の声が頭から離れませんでした。どうしてもキャスティングしたくて彼女に合う作品を探したのですが、何しろ特殊な声なのでいい役が見つからない。宮崎(駿監督)さんの作品にも脇役でいくつか出ていただきましたが、出来栄えは80%と言ったところでしょうか。その後も、TARAちゃんの魅力を100%発揮できる役にはなかなか巡り合えなかった。
それだけに、何年かして1990年に『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)の放送が始まったときは、これだ!とうれしくなりました。ぼくがかかわった作品ではありませんが、これ以上ない素晴らしい配役だったと思います。
ぼくは現場を離れて10年以上経ちますが、TARAちゃんとはスタジオなどで時々会えば挨拶を交わしていました。お亡くなりになったと聞いて本当にびっくりしましたし、残念でなりません」(斯波氏)
人気アニメ『ちびまる子ちゃん』で34年間にわたって主役のまる子を演じ、温かみのある人柄で老若男女に愛されたTARAKOさん。あまりにも早すぎる訃報に日本中が悲しみに包まれている。
所属事務所の発表によれば、TARAKOさんは今年に入ってからも病と闘いながら仕事を続けていたが、容体が急変し、3月4日未明、息を引き取ったという。SNSに頻繁に近況をつづっていたTARAKOさんが最後にX(旧ツイッター)に投稿したのは2月23日。同月4日には『ちびまる子ちゃん』で共演するたまちゃん役の声優の渡辺菜生子、藤木くん役の中友子とのスリーショットを投稿していた。
「『ちびまる子ちゃん』の収録スタジオで撮影された写真とみられ、TARAKOさんは《先週のまる子 またまた菜生たまちゃん、中ちゃん藤木が来てくれたよ うれしいMAXだよ〜ほんとにありがとね》と綴っていました。
車いすに座るTARAKOさんはかなり痩せているようにも見え、壮絶な闘病生活を思わずにはいられません。それでも笑顔を浮かべる3人の写真はほほえましく、共演者同士の絆の強さがうかがえました」(芸能リポーター)
3月9日、『ちびまる子ちゃん』のスタッフ一同が公式ホームページを通じて追悼コメントを発表した。
《TARAKOさんは、収録現場でも常に周りを思いやり、温かく、明るく元気に場を和ませてくださる方で、“ちびまる子ちゃん”の天真爛漫で、家族や友達から愛される姿、そのものでした。最後まで病棟でも収録をしたいと意欲的で、大きな愛情をもって『ちびまる子ちゃん』に向き合ってくださいました》