3月1日、『ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』などの大ヒット作品を生み出した漫画家の鳥山明さんが急性硬膜下血腫のため68歳の若さで亡くなった。突然の訃報に、国内はもちろん世界中から弔意が表明された。鳥山さんの作品のなかでもとりわけ『ドラゴンボール』の海外での人気は凄まじい。
そんな鳥山さんと映画『君たちはどう生きるか』でアカデミー賞「長編アニメ映画賞」を受賞した宮崎駿監督(83)。ともに日本のアニメを世界に知らしめた大功労者だが、2人に意外な“交流”があったことはあまり知られていない。今から21年前、宮崎監督が初めてアカデミー賞を受賞した映画『千と千尋の神隠し』のあるシーンからその関係性が見えてくるという。アニメに詳しいライター・中添喜弘氏が語る。
「『千と千尋』に出てくる湯婆婆が、湯屋で暴れるカオナシに対して “オレンジ色の球体”を発射するシーンです。宮崎監督の絵コンテには『ドラゴンボール風』という指示が書き込まれています。湯婆婆が打った攻撃技は、気弾を作り出すまでの“予備動作”も孫悟空の代名詞『かめはめ波』に似ています。宮崎監督は鳥山先生の作品を認めていてインスパイアされたのではないか」
「メカ好き」の共通点も
そして鳥山さんもまた、宮崎監督のファンであることを明かしていた。
「『ドラゴンボール』を執筆する前に編集者から渡された『未来少年コナン』を見て『ああいう作品を描きたい』と感動したというエピソードが残っています。漫画誌に掲載された鳥山先生のインタビューのなかでは“好きなアニメーション”に『風の谷のナウシカ』を挙げています。その後も1986年に自身のファンクラブの会報で『天空の城ラピュタ』を劇場に観に行ったことを報告しているので宮崎作品はチェックされていたのではないかと思います」(同前)
2人は互いの作品を通して“交流”していたようだ。中添氏はそれぞれの作品に共通する「ある特徴」を指摘する。
「飛行機やロボットなど『メカニック』を頻繁に描いた点です。鳥山先生のお父様は元バイクレーサーで自動車修理店を経営されていて、宮崎監督は実家が航空機部品の製造工場で零戦の部品などを作っていた。“メカ好き”は、育った環境が似ていたことが影響していたのでしょう」(同前)
鳥山さんが描いた魅力的なキャラクターとメカは、これからも世界中で愛され続ける。
※週刊ポスト2024年3月29日号