3月18日開幕のセンバツでは、「21世紀枠」として出場する異色のチームが注目を集めている。氷点下15度、酪農やホタテ漁の盛んな最東端からやってきた球児たちの物語にノンフィクションライターの柳川悠二氏が密着した。(文中敬称略)
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2024年が明け、北海道の東端に位置する別海町に明るいニュースが飛び込んできた。1月26日、町内唯一の高校である道立別海高校がセンバツでの21世紀枠に選出されたのだ。
「町中にポスターが貼られてナインの出場を祝福しており、試合の日はパブリックビューイングが開催されます。別海町全体が活気づきました」
そう話すのは別海町役場総務部・寺尾真太郎だ。同校の硬式野球部を2016年から率いる島影隆啓(41)も地元への感謝を口にした。
「役場や学校だけでなく、個人経営の工場や飲食店でも手作りの横断幕を掲げてくださっています。私は以前、武修館高校(釧路にある私立)の監督時代に2度、21世紀枠に落選しています。私自身や生徒の甲子園の夢が叶ったことよりも町民の方々に喜んでいただいているのが何より嬉しい」
オホーツク海に面する別海は、年間の平均気温は5.4度で、冬季には最低気温が氷点下15度を記録することも珍しくない極寒の地だ。2007~2009年に首都圏で起きた連続不審死事件の罪に問われた木嶋佳苗死刑囚が別海出身だったことも町には長らく暗い影を落とした。そうした負のイメージを払拭する、明るい話題を町中が待ち侘びていた。
野球部は昨秋の道大会で準決勝に進出し、優勝した北海高校に善戦。16人の選手と3人のマネジャーによる快進撃が評価され、甲子園史上、最東端の出場校となった。