中国人民解放軍ナンバー3の何衛東・中央軍事委員会副主席が3月11日に閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、「欠陥のある兵器や装備ではまともに戦えない」「訓練不足も大きな問題になっている」などと述べ、軍内の腐敗や士気の緩みを厳しく指摘していたことが明らかになった。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などが報じた。
何氏は軍の全人代代表団が参加する内部会議で、「軍内での『偽の戦闘能力』を厳しく取り締まる必要がある」と述べた。さらに、軍最高指導者の習近平国家主席(中央軍事委主席)が「ハエもアリも叩く」と汚職に厳しい姿勢をみせているとして、腐敗幹部の取り締まりを強化しなければならないと指摘したという。
これは、中国軍内部では昨年より、兵器や装備を調達する部門の多数の幹部が、公の場から姿を消し、消息がわからなくなっていることに関連していると思われる。
たとえば、李尚福国防相が昨年10月、何の説明もなく国防相を解任され、それ以来、姿を見せていない。また、李氏がロケット軍の最高司令官在任中に部下だった軍高級幹部数人も同様に姿を消している。この幹部については、ロケット軍内の汚職に関与し、腐敗取り締まり部門である党中央規律検査委員会によって取り調べを受けているとみられている。
さらに、何氏は「軍内の訓練がおざなりになっており、士気が緩んでいる部隊もあるようだ」とも指摘。具体的には「夜間訓練」と称していながら、実際は日没前の明るいうちに訓練を済ましてしまうという事例を挙げている。これについて、何氏は会議で「訓練が形骸化して、実戦の役に立たない」と警鐘を鳴らし、中国軍幹部の士気が緩んでいることを戒めた。
習近平主席は軍代表が参加した全人代の会議で、深まる米中対立を背景に、海洋や宇宙、サイバー空間などの分野での戦闘能力の向上を訴えたが、軍内の現場レベルでの意識は習氏の理想とはほど遠いようだ。