3月17日放送の大河ドラマ『光る君へ』での“生々しいシーン”が話題になっている。
「こういう表現は平安貴族のイメージにないので、視聴者の方は驚かれたのかなと思います」──そう語るのは、『紫式部と男たち』(文春新書)の著者で津田塾大学教授の木村朗子氏。
本郷奏多演じる花山天皇が、右大臣・藤原兼家(段田安則)の策謀に騙されて出家。兼家の孫にあたる一条天皇が即位することになる。その際、即位の儀式を中止に追い込むためか、誰かが玉座に「生首」を置いたのだ。SNS上では視聴者から〈激烈にビビった〉〈誰の首なの?〉などと驚きの声が上がっていた。テレビ関係者が言う。
「大河でも戦国時代を描いた作品では首を切るシーンは珍しくないですが、最近は首桶(切り落とした首を入れる桶)を使うことが多かった。今回は首桶を使わず生首を紙に包んで運んでいたので、視聴者をギョッとさせたようです」
その注目シーン、実は伝承と設定が異なるのだという。木村氏が解説する。
「この生首事件は平安時代の歴史物語『大鏡』に出てくる有名なエピソード。そこでは生首を見つけた臣下は兼家に知らせにいきます。ところが兼家は聞こえぬふりをして眠ってしまった。やがて目をさますと何事もなかったかのように『準備できた?』と聞いたとあります。『光る君へ』では息子の藤原道長(柄本佑)が処理していた。これは作品独自の解釈で非常に興味深かったですね」
NHKはなぜこの場面を道長に変えたのか。木村氏はこう読み解く。
「この血なまぐさい陰謀を道長に処理させたのは、今後への“布石”だと思います。道長はこれから自らが政略結婚し、どんどん政治的な人になっていきます。これまでは権力に頓着しない役柄として描かれていましたが、天下人の道へ向かうための下準備だと思います」
主演の吉高由里子演じる紫式部と道長の濃密なラブシーンも話題の『光る君へ』。今後も“攻めた演出”は続くのか。