目の老化を遅らせるためには、きちんと目のケアをすることが大切ですが、正しい目のケア方法をご存じでしょうか? 眼科専門医・森下清文さん監修の元、著書『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)を上梓した、わかさ生活代表取締役社長の角谷建耀知さんに、目の老化を遅らせるための正しいケアの習慣と、とるべき食事について教えてもらいました。
【目次】
目の疲れを感じたときは目を休ませる
眼球のマッサージはNG!目の周りのツボを押すこと
眼球体操はNG。正しい目の筋トレは遠くと近くを交互に見ること
目の老化を遅らせる食事とは
* * *
◆目の疲れを感じたときは目を休ませる
目の老化を遅らせるために大切なのは、目を労わり、きちんとケアをすること。そのためにはまず、目の疲れを感じたら、目を休ませることが重要です。米国眼科学会議で推奨されている、目を休ませる方法は「20-20-20」ルールです。
「『20-20-20』とは、『連続して20分デジタル端末画面を見たり、画面の文章を読んだりしたあとは、20フィート(約6メートル)離れたところを、20秒間眺める』というルールです。このルールを実践することによって、眼精疲労が改善することも報告されています」(角谷さん・以下同)
目の疲れをとる蒸しタオル3分リラックス法
目を温めると血流が良くなり、毛様体筋もほぐれるため、目の疲れをとるには目を温めるのも有効です。目を温めるときのおすすめは「蒸しタオル(ホットタオル)」を使うこと。電子レンジで温めたタオルをまぶたの上に乗せるだけの簡単な方法です。
《蒸しタオルで目を温める方法》
【1】おしぼりを1枚水で濡らしてしぼる
【2】【1】をグルグル巻きにして、電子レンジで加熱する(500Wで1分程度)
【3】電子レンジから取り出してすぐにポリ袋に入れるかラップを巻く
【4】もう1枚の乾いたおしぼりで巻いて「蒸しタオル」完成
【5】「蒸しタオル」をまぶたの上に乗せ、目を閉じて3分ほどリラックスする
「薬を使わないため、やけどさえ注意すれば副作用の心配もなく、目のケアとしてはとても安全な方法です」
疲れたときの目薬は防腐剤の入っていないものを
目が疲れたときのケアとして定番な目薬。ただし、「目薬に関して、最初に言っておきたいのは、他の薬と同じように市販の目薬に大きな期待を持たないことです」と角谷さん。本当に効く目薬が欲しいときは、きちんと眼科医で処方してもらうべきと言います。
さらに、市販の目薬で気を付けたいのが防腐剤。長期的に使うと、目にとっては逆効果になることがあるそうです。
「開封後も清潔に保てるように最近を繁殖させない理由で使われていますが、目が疲れて乾きやすい状態になっていると、防腐剤が長時間目に留まることになり、角膜を傷つける可能性があります。薬局やドラッグストアなどで目薬を購入するときは、防腐剤が入っていないものを選ぶようにしましょう」
目薬は1滴で十分
目薬を差すとき、目からあふれるくらい多めに差す人もいますが、目薬の適量は1滴。目薬の入る容積(結膜嚢といわれる部分)は約30マイクロリットルしかないものの、目薬の先端から出る量は一度に約50マイクロリットルのため、1滴入れてもこぼれてしまうそうです。
「2滴、3滴入れたら目からこぼれてしまうだけです。目薬は1滴で十分。その1滴を確実に入れることが肝心なのです」
◆眼球のマッサージはNG!目の周りのツボを押すこと
まぶたの上から眼球をギュッと押す人もいますが、これはNG。眼球を押すと迷走神経反射を起こし、血の気が引く、気分が悪くなる、冷や汗が出る、めまいがするなどの症状を引き起こすことがあります。
「その代わりにおすすめするのが、目のまわりにあるツボを指圧することです。目のまわりには、たくさんのツボが集中しています。目が疲れたときに目頭を揉むという行為は、実は、そのツボを刺激して疲れを回復させる有効な方法なのです」
正しい目のツボ押し方法
目のまわりのツボを刺激するときには、「ひとつのツボに対して、それぞれ2~3回、『イタ気持ちいい』と感じる強さで3秒程度押す」ようにしましょう。
「ツボを刺激するときも、目(眼球)自体を圧迫しないように気を付けてください」
目の疲れをとる7つのツボ
目のまわりのツボを圧迫することで、目の血流がよくなり、疲れ目などの改善につながります。目のまわりの代表的なツボは次の7つ。
【1】左右のまゆ頭の内側のくぼみ「攅竹(さんちく)」
《押し方》両手の親指で、くぼみを押し上げる
【2】まゆ毛の中央、骨の上「魚腰(ぎょよう)」
《押し方》指の腹で、ぐるぐると小さな円を描くように刺激する
【3】まゆ毛をまゆ尻に向かってたどっていった骨の外側にあるくぼみ「絲竹空(しちくくう)」
《押し方》左右同時に親指で斜め上に向かって刺激する
【4】左右の目頭の上、鼻よりにあるくぼみ「晴明(せいめい)」
《押し方》親指をツボに当て、上に向かって押し上げるように刺激する
【5】左右の黒目のちょうど間下の骨のキワ「承泣(しょうきゅう)」
《押し方》骨のキワに指先を引っかけるようにして下に押す
【6】目尻から指1本分、耳側にある骨のくぼみ「瞳子髎(どうしりょう)」
《押し方》中指などを使い、骨のキワを目に向かって押す
【7】左右のこめかみの少し眉毛寄りのくぼみ「太陽(たいよう)」
《押し方》骨のキワを内側に押し込むように刺激する
「目が疲れたなあと感じたら、押しやすいツボを刺激してみてください。スッキリすると思います」
◆眼球体操はNG。正しい目の筋トレは遠くと近くを交互に見ること
毛様体筋の衰えを防ぐために、眼球をゴロゴロ動かす「眼球体操」などといわれるトレーニングがありますが、「眼球体操はとても危険な行為です」と角谷さん。眼球の大部分を占める硝子体は元々網膜にくっついていますが、眼球を動かすことで硝子体と網膜のくっつきが強い部分に刺激が加わり、裂孔(穴が開くこと)ができることがあるそうです。
「では、どうすれば安全に毛様体筋を鍛えられるかというと、遠くを見たり、近くを見たりする程度で十分。それが、正しい目の筋トレです」
◆目の老化を遅らせる食事とは
目を構成する組織も、体の他の部位と同様に食べたもので作られているため、目の老化を遅らせるためには食事も重要です。
「目の健康を維持するための栄養素をしっかり摂り続けることもまた、目の老化をゆるやかにすることにつながります」
目のビタミン「ビタミンA」
まず摂りたいのは、目のビタミンとも呼ばれる「ビタミンA」。ビタミンAが不足すると光や色に反応する機能が低下するほか、ビタミンAが不足するとドライアイにつながることがあります。
「ビタミンAが多く含まれる食べ物は、レバー(牛肉・鶏・豚)、うなぎ、あん肝などになります。また、体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンを豊富に含む、にんじんやモロヘイヤなどの緑黄色野菜も積極的に摂ったほうがいい食べ物です」
目薬にも含まれる「ビタミンB群」
2つ目は、目薬にも含まれている「ビタミンB群」。ビタミンB群は、ビタミンB1、B2、B3(ナイアシン)、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチンの8種類で、視神経を活性化させて筋肉の疲れを改善させる働きや、血流の改善効果、毛様体筋の主成分であるたんぱく質の吸収を補助して目の細胞の新陳代謝をサポートする働きなどがあります。
《ビタミンB群が多く含まれる食材》
・ビタミンB1:豚肉、うなぎ、ナッツ、豆類など
・ビタミンB2:魚介類、レバー、アーモンド、卵、乳製品など
・ビタミンB3(ナイアシン):魚介類、魚卵、肉類など
・ビタミンB6:野菜、穀類、魚介類など
・ビタミンB12:魚介類、海藻、レバー、肉類など
・葉酸:酵母、藻類、レバー、卵、乳製品など
・パントテン酸:豚肉、うなぎ、ナッツ類、豆類など
・ビオチン:酵母、キノコ、レバー、ナッツ類など
網膜の細胞を守る「青魚」
3つ目は「青魚」。さんまやさばなどの青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)というオメガ3系脂肪酸は、人間の体内ではつくることのできない必須脂肪酸であり、血液をサラサラにします。血管の老化防止に効果を発揮し、網膜にある錐体細胞や桿体細胞などの見るために重要な組織を守る役割があります。
「EPAやDHAを手軽に摂るには、さば缶やさんま缶などの缶詰を活用するのもおすすめです。また同じ魚でも、揚げ物よりは煮魚、さらに生(お刺身)のほうが、よりEPAやDHAを多く摂ることができます」
酸化ストレスから守る「ファイトケミカル」
4つ目が「ファイトケミカル」。ファイトケミカルとは、野菜や果物、豆類などに含まれている化学成分のことで、強力な抗酸化力で体内の細胞を活性酸素から守る力があります。ファイトケミカルは数万種以上の種類がありますが、特に注目されているのが「カロテノイド」と「ポリフェノール」です。
特にカルテノイドの中では、桜エイやカニ、鮭などに含まれる「アスタキサンチン」、緑黄色野菜に含まれる「ルテイン」と「ゼアキサンチン」が、目の老化防止に効果があると言われています。
「ルテインが多い食材はブロッコリーやほうれんそう、かぼちゃ、にんじんなどで、ゼアキサンチンが多い食材はほうれんそう、クコの実、とうもろこし、パプリカ、柿、みかんなどが挙げられます」
ポリフェノールの摂取にはブルーベリー
ポリフェノールの中で目の健康を守る成分として注目されているのは「アントシアニン」です。ものを見るときには網膜に映し出された絵を脳に電気信号で送る必要がありますが、そのときに必要なのが「ロドプシン」という物質です。ロドプシンの合成が遅れると、視界がぼやけたり、かすんだりします。
「このロドプシンの再合成を助けるのがアントシアニン。ブルーベリーが目にいいといわれるのは、アントシアニンが豊富に含まれる食材だからです」
◆教えてくれた人:株式会社わかさ生活 代表取締役社長・角谷建耀知さん
かくたに・けんいち。18歳のとき、脳腫瘍の大手術によって視野の半分を失う。自身の経験から、自分のように目で困っている人の役に立ちたいとの想いで、1998年にわかさ生活を創業し、目の健康サプリ「ブルーベリーアイ」などを販売。現在は多数の企業や眼科医と連携して、商品の開発・情報発信を行う。著書に『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)、『長生きでも脳が老けない人の習慣』(同)など。https://ameblo.jp/wakasa-president/
◆監修:医学博士・森下清文さん
もりした・せいぶん。医療法人森下眼科理事長・医学博士。大阪医科薬科大学で研鑽を積み、同大学の講師として、白内障、緑内障、眼底出血などの診療と研究に従事。1991年に大阪市北区で森下眼科を開業。1992年4月から「市民健康講座 目の勉強会」を開始。全国各地で啓発活動を行う。https://morishitaganka.net/
●《目の不調や病気を早期発見!》世界中から患者の絶えない眼科医が解説する、カレンダーを使った方法など5つのセルフチェック法
●目がかゆくなる「結膜炎」、花粉など原因別の対処法と治りをよくする食材&漢方薬