中国の名門大学である清華大学の元講師が、大学側に中止を求められた香港の民主化運動の研究を続けたため解雇された。さらに大学側は「大学の名誉を著しく傷つけた」などとして裁判に訴え、100万元(約2000万円)もの賠償を請求していることが明らかになった。
最近では研究内容をめぐって、中国内の大学の社会学関係研究者が大学側から批判される事例が増えており、海外逃亡を余儀なくされているケースもあるという。オーストラリアに本部を置く「民主中国陣線」のホームページが報じた。
訴えられたのは清華大学講師だった呉強氏。呉氏は香港の民主化運動を研究テーマに選び、現地で研究を続けることを2019年に大学側に報告した。しかし、大学側は「研究テーマとしてふさわしくない」との理由で、研究を止めるように呉氏に勧告。呉氏は勧告を拒否して香港に赴いたことから、大学側は呉氏を解雇した。
呉氏は解雇を不服として、裁判所に訴えるなど、いまだに係争中だ。
大学側は今年3月、呉氏が裁判に訴えたことなどについて、「大学の名誉が著しく傷つけられた」などとして、100万元(約2000万円)の損害賠償訴訟を起こした。
北京市民の平均年収は13万4244元(約268万4880円)されるが、100万元といえば約8年分となる計算で、多額の損害賠償金となる。
清華大学といえば、習近平国家主席や胡錦濤元主席、さらに朱鎔基元首相ら国家指導者などを輩出。北京大学と並ぶ名門大学であり、このような裁判を起こすこと自体が珍しい。
中国では2012年秋から習近平指導部体制の発足以来、愛国主義教育が一層強調されるようになっている。とくに、習氏の母校である清華大学の卒業生や研究者からは「近年、清華大学では社会批判を主張する研究者の取り締まりを強めている」との声が聞かれるようになっている。