大好評のなかで最終回を迎えた『ブギウギ』。2023年のスタートから『週刊ポスト』は主人公・スズ子(趣里)を応援し続けてきたが、彼女を支えてきた共演者の想いも格別だろう。 “夜の女”のリーダー・おミネを演じた田中麗奈がスズ子への愛を語る。
* * *
「東京ブギウギ」が大ヒットしているところに登場する“夜の女”のリーダー・おミネ役は私にとってプレッシャーでした。愛助を失って悲しみをこらえて生きるスズ子に攻撃的に絡む役柄なので、“これは視聴者の方から嫌われるな”と不安でしたが、受け入れてもらえてホッとしました。
最初の頃はスズ子と対立する関係だったので、それなりの緊張感を保つために趣里ちゃんとは距離を取っていたんです。その後2人が和解して、スズ子から頼まれごとをされたおミネが靴磨きの少年(幼馴染のタイ子の息子)の売り上げに貢献することで力になれた。劇中で役同士が仲良くなっていくにつれて、演じている側も気持ちがほぐれて距離が近づくんですよね。ようやく趣里ちゃんと気兼ねなく色んな話ができるようになって嬉しかったです。
おミネが登場する前、スズ子が「大空の弟」をステージで歌うシーンをテレビで観ていました。弟が戦死して感情が激しく揺れているはずなのに、か細い声になったり泣いたりすることなく、プロの歌手として歌い切った。歌の場面なのに、スズ子のそれまでの人生を映像として見ている気持ちになり、胸を打たれました。
スズ子が熱唱する「ジャングル・ブギー」をおミネが客席で鑑賞する場面もありました。スズ子は情熱的で感覚や本能で生きるタイプですが、私の目から見た趣里ちゃんの演技は自分自身を冷静にコントロールする“知性”を感じました。
趣里ちゃんが演じるスズ子にコメディーセンスをすごく感じるので、演技についての話をするなかで「どこでコメディーを学んだの?」と聞いたこともあります。趣里ちゃんは小さい頃からエディ・マーフィーなどのコメディー作品が好きだったそうです。そんな彼女だからこそ、明るく前に進むスズ子を見事に体現できたのでしょうね。
『ブギウギ』で彼女は、ものすごいことをやり遂げたのだと思います。今回の初共演で、もう何から伝えていいのかわからないくらい、私は趣里ちゃんのことが大好きになりました。
【プロフィール】
田中麗奈(たなか・れな)/1980年生まれ、福岡県出身。近々の出演作に映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(公開中)、『愛のゆくえ』(公開中)。4月からのドラマ『VRおじさんの初恋』(NHK)に出演。
※週刊ポスト2024年4月5日号