ドジャース・大谷翔平(29才)の通訳を務めていた水原一平氏(39才)が、違法賭博で作った450万ドル(約6億8000万円)の負債を返すため、大谷の口座から盗んで送金していたことが発覚し、球団から解雇された。大谷は会見を行い、「違法賭博には一切かかわっていない。すべて一平さんのウソ」と、関与を完全に否定した。
日本では水原氏の裏切られた大谷に対して同情の声が多いが、現地では大谷の責任を追及したり、再説明を求めたりする厳しい論調がある。また、FBIは今回の違法賭博の胴元のマシュー・ボウヤー氏の背後に大規模な犯罪組織はあるとにらみ、厳しく追及する方針だという。一連のトラブルはどこまで波及するのか。何らかの形で大谷が責任を取る可能性はあるのだろうか──。【前後編の後編。前編から読む】
大谷と水原氏の蜜月はあまりに有名だ。一蓮托生の間柄だけに、水原氏に関する疑惑の数々は大谷にも飛び火する。甲南大学名誉教授で弁護士の園田寿氏が指摘する。
「今回の最大の問題は、非合法な賭博組織にお金が流れたことです。もしも大谷選手が、送金先が非合法な組織だと知った上で自ら送金していたら大変な問題になります。仮に大谷選手が知らなかったとしても、自らの口座から資金が流れたことは事実なので、社会的な責任を問われます」
メジャーリーグの「ルールブック」によると、スポーツ賭博に関して、《選手や審判、球団職員らが、自分が関わる試合に賭けたら永久追放処分、自分が関与しない試合に賭けたら1年間の資格停止処分になる》と明記している。野球以外のスポーツ賭博は禁止されていないが、ジャンルを問わず、違法とされる賭博に手を染めたらペナルティーの対象になるという。
現在の状況について在米ジャーナリストは、アメリカ国内における大谷への特殊な“潜在意識”の存在を指摘する。
「もちろん水原氏が手を染めた違法賭博は擁護のしようもありませんが、FBIの捜査については“底意地の悪さ”を感じます。
経緯を振り返れば、当局は1月には大谷選手の口座からの送金を確認していたにもかかわらず、当事者への捜査の前に、わざわざアメリカのスポーツメディアに情報を流した。結果として、大谷選手にとって最もダメージが大きくなる、シーズン開幕に合わせたタイミングで疑惑が明るみに出ることになりました。
大谷選手サイドにとってはシーズンイン前の最も忙しい時期に、水面下で当局とメディアが組んで証拠を集め、一気に“急襲”されたのでしっかりと対応できなかったというところでしょう。捜査当局の存在感を示すことにはなったでしょうが、大谷選手にとってはたまったものではありません」
また、FBIだけでなく、米球界にも同様の意識を感じるという。
「二刀流で前人未到の記録を打ち立てる大谷選手は、ドジャースへの移籍に際し、巨額契約を結びながら異例の『後払い方式』を導入しました。これにより、チームは選手補強のために何百万ドルも節約できるようになりました。
しかしながら、MLBでは選手の年俸総額が大きいチームから追加の“ぜいたく税”を徴収するなど、球団の資金力によって戦力に格差が生じないように工夫してきた歴史があります。関係者の一部からは、『球界が腐心してきた戦力均衡策を崩しかねない抜け穴』だと否定的に捉える声もある」(前出・在米ジャーナリスト)