連覇を目指す阪神は東京ドームでの巨人との“伝統の一戦”で開幕を迎えたが、早くも重苦しいムードが漂っている。3月29日の開幕戦で戸郷翔征、西舘勇陽、中川皓太、大勢に完封リレーを喫して0-4で敗れると、翌30日も0-5で2連続完封負けという屈辱の滑り出しとなった。連覇を期待する地元の思いとは裏腹にシーズン初勝利が遠く、メディアには早くも厳しい論調も見られ始めた。
阪神の「日本一早いマジック」を点灯させることで知られる尼崎中央三丁目商店街では、開幕前々日の3月27日に「マジック143」がボードに掲示された。この“点灯”イベントには地元の阪神ファンが集まり、六甲おろしを合唱。同商店街のマジックは正規ルールのマジックと違い、基本的には残り試合を表示する。ただし、阪神が負けた日には減らさず、勝った翌日に残り試合数まで一気に減らす仕組みになっている。
阪神がナイターで勝てば翌日の早朝、デーゲームで勝ったら試合終了1時間後に、7段の脚立を立ててアーケードに吊り下げられたマジックボードの数字を減らす。担当はマジックボードの前にあるペットショップの尾島晴己店長だ。
「今年は悲願の連覇を目指しています。どんどんマジックが減ってもらいたい。マジックを減らす作業をしていると“強いなぁ”“ようやった”と声を掛けてもらえるんです。ボクが勝ったわけじゃないんですが、嬉しいもんです。今年は開幕戦から毎日脚立に上がりたいですよね」
開幕直前にこう話していた尾島店長だが、苦い思い出もある。前任の矢野燿大監督の最終年となった2022年は、開幕からドロ沼の9連敗。10日以上にわたり「143」のままだった。結局、阪神は3位で終わり、矢野氏はそのまま監督を退任した。
対照的に岡田彰布監督が就任した昨年は開幕から4連勝。そのあとも連勝街道が続いた。5月に入って3連勝、7連勝、交流戦前に8連勝もあり、ボードのマジックを減らす担当の尾島店長は大忙しだった。チームは勢いそのままにリーグを制し、38年ぶりの日本一にもなった。