間もなく決勝を迎える第96回センバツ甲子園において、ツーブロックの髪型をした青森山田の橋場公祐主将が選手宣誓を務め、ピンストライプのユニフォームに個性的なヘアスタイルの中央学院が快進撃を見せたことは、高校野球の新時代を象徴する出来事だったかもしれない。昨夏の甲子園で慶應義塾(神奈川)が日本一となって以来、高校球児の髪型問題への注目度は高まり、慶應のように自由な校風こそ「是」、頑なに丸刈り頭を守り続ける旧態依然とした学校を「非」とするような論調と「脱丸刈り」の風潮は加速している。
そんななか、準決勝の第1試合は、曇り空にもかかわらずグラウンドにいるナインを陽光が照らしているようだった。というのも、勝者・健大高崎(群馬)も、敗者・星稜(石川)のナインも、共に青光りした坊主頭の球児がほとんどだったのだ。大会も終盤に差し掛かると、開幕前に短く丸刈りした球児の髪もある程度伸びてくるもの。ところが、両校のナインのほとんどが、まるで昨日の夜にでも短く刈り揃えたかのようだった。彼らは大会期間中も、宿舎に持ち込んだバリカンで髪の毛を短く切りそろえているのだ。健大高崎の記録員・川名健太郎が話す。
「みんなで示し合わせたわけではなく、気がついたらみんな揃って髪の毛を短くしていました。もちろん、監督さんの指示とかではありません。甲子園に持って来たバリカンで刈る選手もいれば、ホテルに備え付けのカミソリ(ひげ剃り)で剃っている選手もいます。時代に反していることかもしれませんが、短い坊主にすることで、執念や気持ちの強さがプレーに出ると思っています。これが正しいかどうかは、日本一にならないとわからないことですが……」
5番・一塁の森山竜之輔にとっては、短く刈り上げることで「気持ちのこもった、見ている人が感動する試合ができる」と話す。
「自分たちに足りないのは、最後の一球の食らいつき。追い込まれてから、ヒットを打ったり、フォアボールを選んだりするためにも、自分は五厘刈りにしました。一度、カミソリで剃ったこともあるんですけど、(カミソリ負けして、頭皮が)かぶれちゃったことがあるんです(笑)。もちろん、短くしたからといって気合いが入るわけじゃないこともわかっていますが、そういう姿勢が泥臭さにつながると思う」
星稜戦では1点をリードされて迎えた7回表に3点をあげて逆転。5対4と、泥臭く最後までもつれた接戦をものにした。