けたたましい緊急地震速報のアラームと同時に、関東地方を大きな揺れが襲ったのは、3月21日の朝9時過ぎだった。通勤や通学のために移動する人が多い時間帯だったため、路上や電車内などいたるところで悲鳴が上がり、その場にしゃがみ込む人もいた。今年元日に、石川県の能登半島で起きた巨大地震が脳裏をよぎった人も多かったのだろう。
震源は茨城県南部の内陸で、埼玉県加須市と栃木県下野市で震度5弱を観測したほか、広い範囲で震度4を観測した。地震の規模を示すマグニチュード(以下、M)は5.3。同地を震源とする震度5弱以上の地震は、2022年11月以来、約1年半ぶりだった。地震を引き起こすプレート研究の第一人者で、神戸大学教授の吉岡祥一さんが解説する。
「今回の茨城県南部を震源とする地震は、海側のプレート(厚い岩盤)と陸側のプレートの境界の部分で発生しました。プレート同士が押し合うことでずれが生じ、大きな揺れが起きたと考えられます」
関東地方で大きな地震が発生するたびに懸念されるのが、「首都直下地震」だ。首都直下地震とは、東京都や近隣の神奈川県、埼玉県、千葉県などの周辺地域を震源とするM7クラスの地震を指す。政府は「30年以内に70%」の確率で発生するとして注意を呼び掛けている。
内閣府の中央防災会議が2013年に公表した首都直下地震の被害想定によれば、最悪の場合、首都圏全体の死者数は2万2400人、負傷者は12万3000人で、避難民は720万人にのぼるという。
さらに、震源地として危険性の高い19か所を特定して警戒を呼び掛けている。その1つである「茨城・埼玉県境」エリアは、21日の地震の震源地と一致する。地震の規模がM5.3だったため厳密には首都直下地震とは呼べないが、同一視する専門家は少なくない。
地震規模が毎回大きくなっている
今年に入り、関東地方では地震が頻発している。気象庁の発表によると、今年1月から3月にかけて、関東地方周辺では昨年同期間よりも地震の発生回数が増加。特に千葉県東方沖と千葉県南部を震源とする地震は急増しており、2月26日から3月25日までの約1か月で震度1以上の地震は50回を数え(昨年の同期間は9回)、そのうち3回が震度4の大きな揺れを観測した。