バブル景気直前の1984年に「ハートは、まっすぐ」というキャッチフレーズでソロデビューした歌手の荻野目洋子が今年、デビュー40周年を迎えた。1985年に発表した『ダンシング・ヒーロー』が大ヒットした荻野目だが、新人時代は色々な苦労もあったようで……。【全3回の第1回。第2回を読む】
去る2月、40周年の開幕を告げる、荻野目洋子のスペシャルライブが東京・渋谷で開催された。1990年代を彷彿させるロック調やバブリー調の衣装をまとった“荻野目ちゃん”は、全27曲、2時間30分にわたり、ノリノリのステージを披露。ファンの熱い声援に包まれた会場は、終始幸せな一体感に満ちていた。
特筆すべきは、衰えを知らない“キレ”のあるダンス。さぞストイックなトレーニングを続けてきた賜物なのだろうと尋ねると、
「特にレッスンは受けていませんが、10代の頃に基礎的な動きをしっかり学ばせてもらったので、自然と体が覚えている感じです」
と、荻野目ちゃんは微笑んだ。やはり、常人にはできない努力を重ねた先の40年に違いない。
「確かに、10代の頃は無理をしなければ高いレベルにいけないと思っていたので、朝はジョギング、夜は階段の上り下りなど、自分に対してガチガチにルールを課していました。でも55才になったいまは、いかに体を疲れさせないよう『動きすぎず休みすぎず』、そのバランスに気をつけています。私は主婦であり、3人の娘(今年22才、20才、18才)の母親でもあるので、家庭と仕事のバランスが重要なんです」(荻野目・以下同)
そう語る彼女は、優しい母親の表情になっていた。
『ダンシング・ヒーロー』は不思議な力がある曲
1985年に発売された『ダンシング・ヒーロー』が再ブレークしたきっかけは、お笑いタレントの平野ノラが、2015年頃から出囃子(登場曲)に使用したことに始まるが、極めつきは2017年、大阪府立登美丘高校ダンス部が披露した「バブリーダンス」が、SNSで“バズった”ことが大きな要因だ。
──荻野目さんはこの曲が世代を超えて受け入れられる秘密はどこにあると思いますか?
「よくわかりませんが、独特なエネルギーを持った楽曲なのかなとは思います。イントロの強さもありますよね。実際、あのイントロが流れた途端、観客の皆さんが一斉に笑顔になるんです。やっぱり、不思議な曲ですよね」
お笑いとの親和性が高いのも親しまれる理由かもしれない。
「ある世代のかたには、『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系、1988〜1997年)内のコントが思い出されるようです。曲を聴くと、やっぱり笑っちゃうんですって(笑い)。私自身もユーモアは大好き。2月のライブで、コント仕立ての演出を初めて取り入れてみたのですが、楽しんでもらえたかな。
思えば、新人の頃にはザ・ドリフターズの番組に出演させていただき、その後『オレたちひょうきん族』(フジ系、1981〜1989年)、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS系、1986〜1992年)など、私の節目ごとにお笑いのかたとのコラボがあり、それがいい結果につながっていると思います」