最近、90年代にヒットしたドラマの“復活”がたびたびニュースになっている。フジテレビでは『GTO』がスペシャルドラマ化、『踊る大捜査線』がスピンオフ映画化される。その狙いについて、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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4月1日(月)21時、1998年に放送された反町隆史さんの主演ドラマ『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)が26年ぶりに復活します。
時代が平成から令和に変わる中、果たして伝説の教師・鬼塚英吉は今なお高校生のヒーローになれるのか。さらに、反町さん演じる鬼塚と松嶋菜々子さん演じる冬月あずさが劇中で結婚したため、どんな夫婦共演になるのか。小栗旬さん、窪塚洋介さん、池内博之さんら26年前の生徒キャストはどんな姿に成長しているのかなど見どころが多く、放送時はネット上をにぎわせてくれそうです。
「1990年代のドラマが復活」は、『GTO』だけではありません。1997年に放送された織田裕二さんの主演ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)も、3月18日に今秋の復活が発表されたばかり。
同作は1997年にドラマが放送されたあと、1998年、2003年、2010年、2012年に映画化され、その他でもスペシャルドラマやスピンオフ映画などが制作されましたが、2012年の映画を最後にシリーズ終了していました。だからこそドラマから27年、最後の映画から12年での復活はインパクトが大きく、発表時にはXのトレンドランキングを席巻するなど、さっそく反響を集めています。
どちらも1990年代にフジテレビ系で放送されたドラマですが、なぜ今、当時の作品が相次いで復活したのでしょうか。また、ネット上には「シニア向けビジネス」「過去の栄光にすがる懐古主義」などと揶揄するような声もありますが、その見方は正しいのでしょうか。
90年代ドラマは家族視聴の期待大
まずネット上で揶揄されがちな「シニア向けビジネス」という見方について。
まだ世帯視聴率を競い合っていた2010年代ならそう見られても仕方がないところがありましたが、民放各局の評価指標が一変した2020年代で「シニア向けビジネス」に振り切ることは考えづらいところがあります。
現在、営業の現場でスポンサーが重視しているのはコア層(主に13~49歳)の個人視聴率であり、『GTO リバイバル』のターゲットは一般的に50代以上と言われるシニア層ではないでしょう。メインターゲットとなるのは26年前のドラマを見た30~40代の親と、10~20代の子どもであり、家族一緒に見られるコンテンツだからこそ期待されているのです。
では、「過去の栄光にすがる懐古主義」という見方はどうなのか。
確かにテレビがエンタメの絶対的なトップに君臨していた1990年代あたりまでの番組には勢いやパワーがあり、知名度も高いだけに、「それに頼りたい」という思いは少なからずあるでしょう。
しかし、テレビ番組をリアルタイム視聴する人が減って放送収入が低下している中、懐古主義のみで過去の作品を復活させることはありません。「名作に傷をつけられない」というリスク回避の意味も含め、マーケティングによって「この作品ならいけるだろう」というゴーサインが出されているはずです。
では、『GTO』『踊る大捜査線』のマーケティングによる勝算は何なのか。
1990年代後半から2000年代前半あたりのドラマなら、前述したように親子での視聴が期待できる上に、追い風となっているのが、近年の昭和・平成のコンテンツブーム。音楽を中心にファッション、雑貨、インテリア、スポットなど、さまざまなものが若年層に受けていることで、「当時の良いものは今の若者にも通用する」というムードが生まれています。