【週刊ポスト・医心伝身】卵やレバーなどコレステロール値が高い食品を食べてもLDL(悪玉)コレステロール値は上がらないし、下がりもしない。LDLは80%が肝臓で産生されており、食事からの影響を受けにくいからだ。またHDL(善玉)コレステロールは運動で増える。このように今までの生活習慣病に関する俗説に惑わされず、医師と相談しながら最適な治療に取り組み、心筋梗塞などを予防したい。
厚生労働省の調査によると糖尿病や高血圧症、脂質代謝異常症など生活習慣病患者数は全人口の14.5%、約1849万人だが、さまざまな誤解や思い込み、間違った情報が蔓延していたりする。
その最たる例が、卵とLDLコレステロールとの関係だ。
卵1個には約225mgのコレステロールが含まれており、大量摂取でLDLコレステロール値が上がるといわれていた。しかし、LDLの約80%は肝臓で産生されていることが確認され、食品の影響は少ないことがわかってきたのだ。
心臓血管専門医で、生活習慣病に詳しいフルタクリニック(長野県佐久市)の古田豪記院長に聞く。
「2015年に厚生労働省と動脈硬化学会が、コレステロールの摂取制限を撤廃していて、食事制限してもコレステロール値は変わらないことを裏付けています。血中LDLコレステロール値が高くなる原因は遺伝も多く、生活習慣の改善だけでは解決しない場合のほうが多いのです。もちろん高LDLコレステロール血症が長く続くと心筋梗塞や脳梗塞などを発症するリスクが高まりますが、現在はスタチンという肝臓でコレステロールを作らないようにする薬が処方され、突然死防止に貢献しています」
コレステロールは体内の細胞膜や各種ホルモン、胆汁酸などの原料であり、体には必要不可欠な物質だ。
皮肉なのは太古の飢餓の時代、食べ物が少なかった頃はLDLコレステロールが高い人ほど、しっかりした体を作れたので善玉だったのだ。