こども家庭庁の調べによると、児童虐待相談対応件数は過去最多の21万9170件(2022年度速報値)にのぼり、32年連続で増加中だ。このような社会状況から子どもたちを救う一縷の光として、アメリカの臨床心理士であるマーシャル・B・ローゼンバーグ氏が考案した「NVC(Nonviolent Communication)」(日本語では「非暴力コミュニケーション」)と呼ばれるコミュニケーション手法がいま話題となっている。
「NVC」はひとりひとりの生きる力を大切にし、誰も敵扱いすることなく、理解や思いやりを基調とした平和的なコミュニケーションの手法で、親から子へと一方的な支配が起こりがちな子育てにおいても転用できるとされている。そこで、『親と子どもが心でつながる「キリン語」の子育て NVC非暴力コミュニケーションワークブック』の著者であるkokoさんに、「NVC」の主軸となる考え方を聞いた。
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あなたは子どもと、どんな関係を築いていますか。「親のほうがえらいのだから、親や大人の言うことや考え方に、子どもが従うのは当然」とする「パワーオーバー(支配的な力関係)」ですか。それとも「年齢や立場に関係なく、みんなが等しく持っている命の力に寄りそおう」とする「パワーウィズ(対等な力関係)」ですか。
「パワーオーバー」や「パワーウィズ」とは、聞き慣れない言葉ですが、NVCの中で、とても大切にされている概念です。
例えば、子どもが食卓で食べ物をこね回したり、床に落としたりする時。「ちゃんと食べなさい!」と強要したり、取りあげるなどの罰を与えたりするかもしれません。しつけるのは親の役割で、子どもは親に従う義務がある。子育てでは、こんなふうに「親が上で、子どもが下」という「パワーオーバー」の関係性が成り立っていることがほとんどです。
もちろん子どもが小さいうちは、さまざまな世話をする必要があり、親が子どもに教える、また子どもが親に従う、ということが大切なことも多々あります。
だからといって、子どもを自分の思い通りにさせようとしてはいませんか。親の意見や価値観を押しつけようとしていませんか。「こんな子に育ってほしい」という期待が強すぎてはいませんか。NVCは、こうした力関係を見直し、「パワーウィズ」という新しい関係を大切にすることを促します。
パワーウィズは、全ての命は、「生きていく力をすでに十分、持っている」という信頼をもとに作られる関係性です。子どもは小さくても自分なりの思いや主張や好き嫌いがあって当然。大切にしたいこと(ニーズ)も大人と違う、あくまでも独立した個人。だから固定化した関係性や役割にしばられずに、人と人、命と命として深くつながっていこう。そんな考え方を基調とした、より対等な親子関係がパワーウィズの世界です。