中国の習近平指導部が学生の民主化運動を警戒する中、北京大学など「国家重点大学」と呼ばれる112校を中心に、学内の学長事務室を廃止して、大学運営について各大学の中国共産党委員会に一本化することが明らかになった。上海で国家重点大学の党委責任者と学長らによる会議が開催され、了承された。オーストラリアを拠点とする中国民主陣線(民陣)ホームページが伝えた。
この学長事務所の廃止については、習近平指導部が提案したもので、昨年から準備が進められ、新学期が始まる9月までには実施される予定だという。
これまでの党委の役割は党員の育成や党中央の決定事項の実行、共産党思想の深化、党員会議の招集など。一方の学長事務所は、教員の養成・管理や、教育内容の決定と学生の成績管理、就職の斡旋などを行っていた。統合後の名称は「党委員会」に一本化される。
胡錦濤元主席や習近平主席ら歴代の党最高指導者を輩出した清華大学や江沢民元国家主席が卒業した上海交通大学など、数十の大学ではすでに学長事務室が廃止されている。
学長事務室廃止は党委に権力を集中させ、学生による民主化運動などの反政府活動を取り締まる狙いがあるとみられる。
中国では1989年6月の天安門事件後、各大学の党委の権限が強化され、学生の動向に目を光らせていた。しかし、一昨年11月から12月にかけての「白紙運動」では、中国各地の主要大学の学生らがSNSなどで連絡を取り合い、一斉に「ゼロコロナ政策反対」の運動を開始。運動が民衆の強い支持を受けたことで、取り締りを徹底することができず、その影響もあり、最終的に習近平指導部はゼロコロナ政策を撤回せざるを得なかった。
こうした一連の動きに神経を尖らせた習指導部はすぐに党中央委員会を通じて各大学の党委に連絡し、学長室廃止による党委への権限一本化を指示したという。
中国では、「学問の自由」を保障するはずの「大学の自治」の形骸化はもはや否めないようだ。